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『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』オーガスティン・フリッゼル監督 人生を楽しむことを自分自身に許す【Director’s Interview Vol.270】
フィルムメーカーとしてのメッセージ
Q:本作に影響を与えた映画やフィルムメーカーをお聞かせください。
フリッゼル:あらゆるところからそれぞれ異なる影響を受けています。青春映画という意味では、いろんなティーン映画を観ましたし、特に『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07)に大きな影響を受けました。「Broad City(原題)」(14~19)(※)も見直しましたね。映画の雰囲気は『ドラッグストア・カウボーイ』(89)から、撮影面では『ビッグ・リボウスキ』(98)や『ブギーナイツ』(97)のカメラワークに大きな影響を受けています。ほかの映画監督たちと同じく、私もポール・トーマス・アンダーソンの大ファンですし、クエンティン・タランティーノも大好きなんですよ。
ただし、自分の経験や実話を映画にするという点では、あまり影響を受けた作品はありません。そういう目で映画を観たことがないんです。実際の出来事から影響を受けている作品にせよ、映画は事実の正確なレプリカではないし、むしろすべての映画は作り手の人生から影響を受けていると思います。そして、実話映画であってもある程度はフィクションにすることを受け入れるほかない。この映画もそうでした。
(※)「Broad City(原題)」:2014年~2019年にアメリカのケーブルテレビ・チャンネル「コメディ・セントラル」で放送されたシットコム番組。女性ふたりの友情を軸にしていること、主人公のひとりが大麻常用者であることなどの共通点がある。
『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』©2018Muffed Up LLC. All Rights Reserved.
Q:アメリカでの公開から約4年が経ち、いよいよ日本で公開されます。この4年間にはあまりにもいろんな出来事がありすぎたので、監督自身にも変化があったのではないかと思います。今、初めて本作を観る日本の観客に伝えたいことはありますか。
フリッゼル:そうですね……(長考)。おそらく、映画のメッセージは変わらないと思うんです。私にとって、この映画は自分の経験をジャンルに乗せて表現したもの。私はストーナー・コメディ(編注:大麻使用に関わるコメディ)が大好きだし、ティーンの青春映画が大好き。けれど、今までに「これこそ私の体験が描かれている映画だ」と思えた作品はありませんでした。そんな映画を作るのは楽しかったですし、だからみなさんにもくつろぎながら、頭を使わずに楽しんでほしいと思います。教訓もなければ、素晴らしい倫理観もない、ふたりの少女が生涯の友情を謳歌しながら自分の人生を生きるだけの映画です。親友がいた、つらい経験をした、そんな人たちのための作品になっていることを願っています。
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(c) IMDB
監督:オーガスティン・フリッゼル
テキサス州ダラス生まれ。本作が長編デビュー作である。フリッゼルが監督した最初の短編2本はサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)始め多くの映画祭でプレミア上映されている。女優としても15年以上ものキャリアがある。長編2作目は日本ではNetflixで配信されている『愛しい人から最後の手紙』
取材・文:稲垣貴俊
ライター/編集/ドラマトゥルク。映画・ドラマ・コミック・演劇・美術など領域を横断して執筆活動を展開。映画『TENET テネット』『ジョーカー』など劇場用プログラム寄稿、ウェブメディア編集、展覧会図録編集、ラジオ出演ほか。主な舞台作品に、PARCOプロデュース『藪原検校』トライストーン・エンタテイメント『少女仮面』ドラマトゥルク、木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談―通し上演―』『三人吉三』『勧進帳』補綴助手、KUNIO『グリークス』文芸。
『Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック』
12月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
配給:REGENTS
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