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『The Son/息子』フロリアン・ゼレール監督 三世代の関係性に託したものとは【Director’s Interview Vol.293】
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三世代の関係に託したもの
Q:世代で引き継がれてしまうサイクルを描かれたとのことですが、世代による考え方の違いなどは意識されていますか。
ゼレール:意識している部分はありますね。今回は祖父・父親・息子の三世代を意図的に登場させています。自分の内面を掘り下げることをせず、文句も言わず自分を犠牲にしてでも突き進むような祖父の世代に対して、17歳のニコラスは自分の気持ちを雄弁に伝える言葉を持っていますが、それをうまく伝えることが出来ず人生が見えずにいる。その間にいる世代がピーターで、祖父よりも良い父親であろうとしていますが、実は心の中では“男とはこうあるべき”という考えも持っている。それゆえ全ての問題を自分で解決しなければと責任を感じ、それがうまくいかずフラストレーションが溜まり暴力性が露わになってしまう。
他人の痛みはなかなか理解しがたいところがあって、特にメンタルヘルスに関してはそれが顕著になります。理解出来ないからどう助けて良いのか分からなくなる。まさにピーターがその状態。息子を愛していることは間違いないし、良い父親にもなろうとしていますが、それでもどうしたら良いのか分からない。なぜそうなってしまうのか、それはピーター自身も息子として痛みを抱えているからなんです。そのことを三世代の関係に託しました。
『The Son/息子』© THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
Q:なぜこの問題を映画で取り上げたのでしょうか。
ゼレール:今回の映画では、家族が子供を助けようとしてもうまくいかない、その無力さを描きました。メンタルヘルスの問題は、当人だけではなく周囲の人までもブラックホールのように呑み込んでしまう。そもそも問題を抱えているかどうかの見極めがとても難しく、羞恥心や罪悪感など感情的な部分も関わってくるため、オープンな会話もなかなか出来ない。でも私たちの愛する人を助けるためには、オープンな会話が必要なのです。その思いが伝わればとこの作品を作りました。
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監督・脚本・原作戯曲・製作:フロリアン・ゼレール
1979年、フランス生まれ。作家、劇作家、監督。ロンドンのタイムズ紙に「現代において最も心躍る劇作家」だと称賛される。「The Father(原題)」、「The Mother(原題)」、「The Truth(原題)」、「The Lie(原題)」、「The Height of the Storm(原題)」などの戯曲を手掛け、45ヵ国以上もの国で上演されている。パリ、ロンドン、ニューヨークで多くの賞を受賞したヒット作であり、ガーディアン紙からは「過去10年の間で最も優れた劇作品」と絶賛された「The Father」を、自ら脚本、監督を務めて2020年に映画化。長編映画初監督作となったその作品『ファーザー』(日本語タイトル)は、アカデミー賞®6部門にノミネートされ、主演男優賞と脚色賞を受賞。さらに、英国アカデミー賞主演男優賞と脚色賞、セザール賞外国映画賞にも輝く。監督2作目となる本作の原作戯曲「The Son(原題)」も、2019年にロンドンで初上演され、数々の賞を獲得している。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『The Son/息子』
3月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー 配給:キノフィルムズ
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