1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『The Son/息子』フロリアン・ゼレール監督 三世代の関係性に託したものとは【Director’s Interview Vol.293】
『The Son/息子』フロリアン・ゼレール監督 三世代の関係性に託したものとは【Director’s Interview Vol.293】

© THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

『The Son/息子』フロリアン・ゼレール監督 三世代の関係性に託したものとは【Director’s Interview Vol.293】

PAGES


ファーザー』(20)で認知症と家族の関係を新たな視点で描き出したフロリアン・ゼレール監督。最新作『The Son/息子』で描かれるのは、親子の心の距離の物語。本作はゼレール監督が戯曲として描いてきた家族三部作の第二部。『ファーザー』とは異なる手法で、親子関係と心の問題を丁寧に紐解いていく。強いメッセージ性に溢れた本作だが、ゼレール監督はどのような思いで作り上げたのか。話を伺った。



『The Son/息子』あらすじ

高名な政治家にも頼りにされる優秀な弁護士のピーター(ヒュー・ジャックマン)は、再婚した妻のベス(ヴァネッサ・カービー)と生まれたばかりの子供と充実した日々を生きていた。そんな時、前妻のケイト(ローラ・ダーン)と同居している17歳の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)から、「父さんといたい」と懇願される。初めは戸惑っていたベスも同意し、ニコラスを加えた新生活が始まる。ところが、ニコラスが転校したはずの高校に登校していないことがわかり、父と息子は激しく言い争う。なぜ、人生に向き合わないのか? 父の問いに息子が出した答えとは──?


Index


引き継がれてしまうトラウマ



Q:子を持つ親の立場からすると、この映画に出てくる様々な人物に視点や思いが重なりました。 


ゼレール:私にとって映画とは鏡のようなものです。観客が自分自身の姿を見出して、自分について何かを学べるようなものであって欲しい。何か辛いことがあると、自分だけ苦しんでいるように思いがちですが、映画を観ると「自分はこの大きな世界の一部であり、同じように感じている人は他にもいる」と感じさせてくれる。それこそが映画や芸術の役割だと思います。喜びや悲しみ、楽しみや怒りなど、人は皆同じようなことを経験しています。映画を通してそのことを感じ、自分だけではないと思うことが出来る。それが映画というものなのです。



『The Son/息子』© THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.


Q:祖父(アンソニー・ホプキンス)の「so what(だから何だ)」というセリフがとても印象的です。このシーンやセリフにはどのような思いを込められたのでしょうか。


ゼレール:この物語は父であるピーターの視点で語られていますが、祖父が登場することにより、ピーター自身も息子であり痛みを抱えていることが強調されます。ピーターは自分の父親よりも良い父親になろうとしていますが、それは簡単なことではない。父親とは違うやり方をしているつもりでも、無意識に同じようなことを自分の息子に繰り返してしまっている。あのシーンやセリフでは、そのトラウマがサイクル的に引き継がれてしまうことを描いています。そしてそれと同時に、その鎖をどう断ち切れば良いのかという問題も提起しています。これは我々全ての人に当てはまること。なぜなら我々は永久の息子であり娘なのですから。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『The Son/息子』フロリアン・ゼレール監督 三世代の関係性に託したものとは【Director’s Interview Vol.293】