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『メグレと若い女の死』パトリス・ルコント監督 撮りたいものは頭の中にハッキリある。無駄のない映画作り【Director’s Interview Vol.294】
生誕120周年を迎えたフランスを代表するミステリー作家ジョルジュ・シムノン。彼の最大のベストセラー「メグレ警視シリーズ」はこれまで何度も映画化されてきた人気作。シリーズきっての名作と名高い「メグレと若い女の死」を、今回は巨匠パトリス・ルコントが映画化。シムノンのファンだというルコント監督、彼ならではの雰囲気も残しつつ、推理ミステリーとしてきっちり仕上げてみせた。巨匠の手堅い仕事ぶりには思わず嘆息してしまう。
なんと今回はそのパトリス・ルコント監督本人にインタビュー。彼ならでは映画作りについて話を伺った。
『メグレと若い女の死』あらすじ
ある夜、シルクのドレスを着た若い女が死んだ。 片足には靴がない。不釣り合いなほどの高級ドレス。 5か所もの執拗な刺し傷...。この謎めいた事件を担当するのが警視庁犯罪捜査部のジュール・メグレ警視。わずかな手掛かりをもとに、メグレは名前すらわからないこの若い女を殺した犯人を捜すことになった一。
Index
無駄のない脚本と撮影
Q:ルコント監督が惹かれたという、原作者ジョルジュ・シムノンの「本質を掴み最小限の言葉で説明する才能」は、そのままルコント監督にも当てはまると思いました。今回の映画も90分以内に収められ、且つ本質を逃すことはありません。
ルコント:最近の映画は長くて2~3時間くらいありますが、私は昔から短い映画が好きなんです。偉大だと思う作品は大体90分くらいのものが多い。それくらいがちょうどよく、言いたいことを表現できる心地良い長さだと思います。それが私とシムノンとの共通点と言ってくださるのはとても嬉しいですね。
『メグレと若い女の死』©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.
Q:シナリオの段階で無駄なシーンが無いように心がけているとのことですが、撮影や編集で選択肢が少なくなることに不安はありませんか。
ルコント:私はシンプルでエコな撮影をずっとやってきたので、もう無意識にこの方法になっています。撮影前に綿密なリハーサルや準備を行うので、現場に入ってから試行錯誤することはほとんどありません。全ての物事を事前に深く考えていて、撮りたいものに対する考えが頭の中にはっきりある。現場ではそれをどのように落とし込むかだけです。アドリブ的な思いつきはほとんどないですね。もちろん編集の段階で「あれも撮っておけば良かった」と思うこともたまにありますが、私にとってはこの方法がベストです。