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『GOLDFISH』永瀬正敏×北村有起哉 演じるのが難しい、関係が切れていない微妙な距離【Actor’s Interview Vol.29】

『GOLDFISH』永瀬正敏×北村有起哉 演じるのが難しい、関係が切れていない微妙な距離【Actor’s Interview Vol.29】

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ハルとメンバーの関係性



Q:今回の藤沼さんは還暦を過ぎての監督デビューですが、現場での監督はいかがでしたか。 


永瀬:すごく安心感がありました。監督自身がこの物語を身にまとっている方ですから、そこは絶対に揺るがないものがあった。それが安心感につながったのかもしれません。しっかり“場”を作っていただきました。


北村:監督からすると思い入れのある物語ですが、映画と実際の出来事の違いを言えばきりがない。そこの割り切りは腹を括られていたと思います。これだけ思い入れがあると暴走しちゃってもおかしくないと思いますが、すごく丸い感じで現場を仕切っていました。「本当に監督するの初めてなんですか?」というくらい落ち着かれていましたね。現場ではあまり細かい注文はなかったのですが、ふんわりしたヒントはいただけたので、それをガイドにやっていました。


Q:再現度には特にこだわりはなかったということでしょうか。


北村:そうですね。ハルはメンバーを拒絶し過ぎないように、でも一人ぼっちになり過ぎないようにしました。皆との絆は相当深いんでしょうね。団地のときからの幼馴染で、若いときに一緒に人気絶頂を味わったわけですから。何故いつも女の人に面倒をみてもらっているのか、そこら辺は謎ですが(笑)。何かほっとけないものがある人だったんでしょうね。


ただ、ポスターは実際のものに寄せました。皆は腕を組んだり舌を出したり、僕は後ろの壁がに手を添えたりと、そこは実物を再現する形で撮影しましたね。



『GOLDFISH』©2023 GOLDFISH製作委員会


Q:ハルの彼女の雅美を演じた有森也実さんは、まさにナンシー・スパンゲン、コートニー・ラブのようで鬼気迫るものがありました。


北村:すごいですよね。雅美のハルへの執着が強すぎるので「僕はどこにも行かないから大丈夫だよ」って思うくらいでした。イチに対して「不吉だ」と言って「シッシッ!」って追い払うし、タバコも2本咥えて敵意を剥き出しにするし(笑)。でもハルはそれも見て見ぬ振り。あの関係は連れ添った期間も相当長いと思いますね。ちなみに雅美の髪は公務員のときは黒くて、髪を下ろしたら金髪が出てくる。あれどうやって結んでたんでしょうね(笑)。


永瀬:ハルは「27クラブ*」のようにパッと散る美意識がアイデンティティとしてどこか漂っている。触れると消えてしまいそうな。一方でイチは「老いていくのもカッコイイじゃねぇか」と続けることの格好良さを認めつつ、でもどこかでハルのカリスマ性には絶対勝てないと思っている。そんな関係だけど、やっぱり仲間だから繋がりは切れてない。この“切れてない”芝居が難しいんですよ。「俺今更やらねぇよ」「もうほっといてくれ」ってお互い切れた方が簡単。全部シャットダウンした方が簡単なんだけど、切れていない微妙な関係は実に難しかったですね。


*)ジミ・ヘンドリックス、ジム・モリソン、ジャニス・ジョプリン、カートコバーンなど、27歳で死んだミュージシャンやアーティスト、俳優たちの総称。




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