誰の人生の中にもチャーリーはいる
Q:チャーリーに共感できる要素は無いと、見た目で判断してしまう人は多いと思いますが、映画を観るとチャーリーの中に自分を見つける人は少なくない。チャーリーという人物をどう捉えましたか。
フレイザー:まさに外から見える以上に色々なものを持っている人物ですよね。この映画のタイトルが『ザ・ホエール』だからといって、決して肥満体型の男性の物語ではない。あくまでも、娘との関係を修復することによって贖罪を見出そうとする父親の話なのです。チャーリーは教育者でありメンター、人の親であり、誰かの恋人でもありますが、同時に少しダークな部分も持っている。それはつまり、彼はとても人間的なキャラクターであるということ。そして置かれている過酷な状況の中でベストを尽くしている。そのことは決して忘れないようにしていました。
誰の人生の中にもきっとチャーリーはいる。僕自身、最初はそう感じたし、彼の友達になりたいとさえ思いました。そういった意味ではすごくパーソナルな物語。役者として厳しい状況になっていたときに、挑戦を突きつけてくれた役でもある。すごく素晴らしいことでしたが、同時に怖くもありました。32年間役者をやってきて、ここまで求められたのも初めての経験でしたね。アロノフスキーの求める基準はとても高いけど、でもそれはすごくいいこと。だって皆から最高のものを引き出せるわけだから。
『ザ・ホエール』© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.
Q:この作品が自身の転機になりそうだと感じていましたか?
フレイザー:意義深いものになるとは最初から感じていました。意外性もあるし再び僕の存在を知ってもらえるだろうと。でも一番実感したのはヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映が終わったとき。本当に人に響く作品を作ったんだなと、満ち足りた気持ちにさせてもらえました。
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ブレンダン・フレイザー
1968年12月3日生まれ、アメリカ・インディアナ州インディアナポリス出身。ヨーロッパやカナダで育ち、ロンドンに引越したのを機に劇場へ足を運ぶようになる。シアトルにある芸術大学で美術学士号を取得した。1991年に『恋のドッグファイト』で映画デビュー。1999年、代表作となるスティーヴン・ソマーズ監督による大ヒットアクション・ホラーアドベンチャー『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』の主演を演じる。2001年には、続編『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』でソマーズと共演者レイチェル・ワイズと再タッグを組んだ。2008年には、シリーズの第3弾、『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』が公開。『センター・オブ・ジ・アース』(08)では主演、製作総指揮を務めるが、その後は、心身のバランスを崩ししばらくの間ハリウッドの表舞台から距離を置く。主な出演作に、『青春の輝き』(92)、『きっと忘れない』(94)、『ハードロック・ハイジャック』(94)、『ゴッド・アンド・モンスター』(98)、『モンキーボーン』(01)、『愛の落日』(02)、『クラッシュ』(04)、『狼たちの報酬』(07)、『インクハート/魔法の声』(08)、『G. I. ジョー』(09)、『アニマル・ウォーズ 森林帝国の逆襲』(10)など。近年は、スティーヴン・ソダーバーグ監督によるHBOMax作品「クライム・ゲーム」(21)、HBOMax/DC Entertainmentのシリーズ番組「ドゥーム・パトロール」(19)、「ポイズン・ローズ」(19)などテレビドラマに出演。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『ザ・ホエール』
TOHOシネマズシャンテほか絶賛上映中!
配給:キノフィルムズ
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