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サディスティックな鬼才、ダーレン・アロノフスキー
長編デビュー作『π』(98)と2作目の『レクイエム・フォー・ドリーム』(00)で、精神に異常をきたしていく人々を偏執狂的に描きだした、ダーレン・アロノフスキー監督。すでにその頃から、多くの映画ファンに「この監督フツーじゃない…」と思われる存在となっていた。
『ファウンテン 永遠に続く愛』(06)では宗教的なテーマで賛否両論を巻き起こし、『ブラック・スワン』(10)では、純真無垢なバレリーナが精神的に錯乱していく様をナタリー・ポートマンに演じさせ(アカデミー賞主演女優賞を獲得!)、続く『ノア 約束の舟』(14)では大金を投じて聖書の世界を映像化。その後の『マザー!』(17)は米国の観客の反応があまりに悪く、日本公開が見送られるという驚きの事態を引き起こした。
賞賛とブーイングを浴び続け、サディスティックさと宗教的なコンセプトを混濁させながら突進していく。現代の「鬼才」の動向は全くもって目が離せない。
安定志向とは真逆に見えるアロノフスキー監督だが、ことスタッフィングとなると、実は慎重な姿勢が見えてくる。その象徴が、撮影監督のマシュー・リバティーク。デビュー作から『マザー!』までほぼ全ての撮影を担当する不動のパートナーだ。しかし、実は一作だけ例外がある。それが、『レスラー』(08)なのだ。