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『せかいのおきく』黒木華×寛一郎×池松壮亮 映画が持つ社会的メッセージとは【Actor’s Interview Vol.32】

『せかいのおきく』黒木華×寛一郎×池松壮亮 映画が持つ社会的メッセージとは【Actor’s Interview Vol.32】

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モノクロでスタンダードサイズの時代劇という、近年の日本映画ではほとんど見られなくなった手法に挑戦し、珠玉の傑作として誕生した『せかいのおきく』。江戸の循環型社会を背景に据えつつも、描かれるのは若者たちの瑞々しい青春と人生讃歌。阪本順治監督の新たな代表作と言っても過言ではないだろう。


本作の企画・プロデュースは、美術監督として長年活躍してきた原田満生氏。原田は言う、「これまで長いこと利益追求型の映画作りに関わってきましたが、ある時、そうではない映画との向き合い方もあるんじゃないかと思ったんです。ちょうどそんな頃にYOIHI PROJECT* を立ち上げ、映画を通して環境問題を伝えることができるんじゃないかと」。


そこで声をかけたのが盟友でもある阪本順治監督。また原田は、せっかくだから阪本監督と仕事をしたことのないキャストをと、原田自ら、黒木華・寛一郎・池松壮亮の若き役者たちに声をかけたという。原田の思いを受け止め見事に役を務めた3人だが、どのような思いでこの映画に挑んだのか。話を伺った。


*YOIHI PROJECT:気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が協力して、様々な時代の「良い日」に生きる人々を描き「映画」で伝えていくプロジェクト。本作はその第一弾作品。



『せかいのおきく』あらすじ

22歳のおきく(黒木華)は、武家育ちでありながら今は貧乏長屋で父と二人暮らし。毎朝、便所の肥やしを汲んで狭い路地を駆ける中次のことをずっと知っている。ある時、喉を切られて声を失ったおきくは、それでも子供に文字を教える決意をする。雪の降りそうな寒い朝。やっとの思いで中次の家にたどり着いたおきくは、身振り手振りで、精一杯に気持ちを伝えるのだった。江戸末期、東京の片隅。おきくや長屋の住人たちは、貧しいながらも生き生きと日々の暮らしを営む。そんな彼らの糞尿を売り買いする中次(寛一郎)と矢亮(池松壮亮)もまた、くさい汚いと罵られながら、いつか読み書きを覚えて世の中を変えてみたいと、希望を捨てない。お金もモノもないけれど、人と繋がることをおそれずに、前を向いて生きていく。そう、この「せかい」には果てなどないのだー。


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モノクロだからこそ伝わるもの



Q:完成した映画をご覧になっていかがでしたか。


寛一郎:僕はこの作品大好きです。撮っている最中も面白いと思っていましたが、完成してモノクロ・スタンダードで観てみると更にいいなぁと。出ているキャラクターもいいんでしょうね。他にもいい点は果てしなくあるのでしょうが、総じてすごくバランスがいい映画だなと思います。


黒木:色が無い分様々な感覚が入ってきて、色づいた瞬間にハッとする。よりモノクロが際立ってきますね。風やうんちも、モノクロだからこそこんなにも伝わってくる。最近はモノクロ映画をあまり観てなかったこともあり、とても面白いなと思いました。



『せかいのおきく』©2023 FANTASIA


池松:美しい映画になったなと思いました。ルックとしても、精神も。企画がはっきりとしていました。何を伝えるのか、何を描くかがハッキリしていたし、軽やかで普遍的で、かつ現代に必要な物語を生み出していました。脚本の時点からすでに素晴らしかった。まさかモノクロ映画が、この国でこの時代に生まれるとは思いませんでした。夢がひとつ叶いました。この国の主流である製作委員会方式でやっていたらまず産まれてこない作品だったと思います。こうした意義深い作品創りに携われたことを幸運に思います。





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