山田杏奈に託した“希望”
Q:凛を演じる山田杏奈さんが非常に現代的で、貧困の只中にいるもかかわらず悲壮感はありませんでした。山田さんのキャスティングの決め手や本人への演出について教えてください。
福永:決め手はまさにそこで、悲壮感漂う人が演じてしまうと、希望を感じない物語になってしまう。人間の醜い部分や厳しい現実を描きつつも、そういったことに屈しない主人公を描きたい。そのためには、目の奥の輝きや佇まい、逞しさや飄々とした感じなど、一人で山に行っても大丈夫な雰囲気を持った人を選ぶ必要があった。まさに山田さん自身がそれらを兼ね備えていたんです。また、凛は村に自分の居場所がなくなり山に入っていくので、村では多少違和感があった方が良い。そこが逆になってしまうと成立しなくなってしまう。実際に山で撮影していると、山田さんは自然の中にすごく馴染んでいました。
『山女』©YAMAONNA FILM COMMITTEE
Q:森山未來さんのキャステイングと役作りには驚きました。「山男」を具現化するにあたりどんなところに注力されましたか。
福永:山男という異質な存在を映画の中でちゃんと纏うことが出来なかったら、いろんなものが一気に崩れてしまう。作品全体の中でもすごく大事な役であり、その造形はとても難しかったです。人間の形をしているけど何かが違うといった、絶妙なバランスを目指して試行錯誤しました。森山さんは身体表現をされていたり、生と死や人間を超える存在などに関心のある方なので、それらが山男の存在感を生み出した部分もあると思います。造形に関しても、衣装の宮本さんや特殊メイクの百武さん、そして森山さんと話合いを重ねて作り込んでいきました。