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『1秒先の彼』山下敦弘監督 経験値が教えてくれるもの【Director’s Interview Vol.329】

『1秒先の彼』山下敦弘監督 経験値が教えてくれるもの【Director’s Interview Vol.329】

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振り幅の大きいキャステイング



Q:岡田将生さんと清原果耶さんという二枚目の二人が主演ですが、演じる役柄は三枚目。その魅力はどのように引き出されたのでしょうか。


山下:岡田くんはデビューしたばかりの『天然コケッコー』(07)から知っていて、見た目的には男前で綺麗ですが、中身はすごく柔らかくて少しナヨっとしているところがある。宮藤さんも「ゆとりですがなにか」(16 NTV)で岡田くんを書いてるし、岡田くんに関しては、今回はほぼ当て書きだと思います。その方が本人もやりやすいだろうなと。清原さんとは今回初めてでした。彼女自身すごく真面目だし器用な部分もあるのですが、演技や役に対しても真っ直ぐな部分が、逆にちょっと不器用に見えたらいいなと。


最初は台湾版をイメージしてやっていたのですが、年齢も違うし男女も入れ替わっているから、こっちは二人の雰囲気のまま進んでいこうと。お話としては台湾版とそんなに違わないラストですが、印象としては違ったものになったなと。不思議な余韻のある映画になったと思います。



『1秒先の彼』©2023『1秒先の彼』製作委員会


Q:周りを固めるキャストも楽しすぎるくらいですが、キャスティングはどのように決まっていったのでしょうか。


山下:京都が舞台なのでネイティブな京都の人がいいなというのはありつつ、そこもひっくるめて大阪や関西の人たちをイメージしていました。そこに宮藤さんからのアイデアも加わっていっぱい集まりましたね。最初のシナリオでは「ラジオDJ笑瓶のおばんざいナイト」って具体的に書いてあったから、あー、笑瓶さんなんだろうなと思ったり(笑)。また、「男女反転するということはバスの運転手は誰かほかにいるよね」って言ったら、宮藤さんが「荒川くんかなぁ」って、すぐ荒川良々さんの名前が出てきた。そうやって、宮藤さんの世界観もありつつ、今までの自分の引き出しもありつつ、いろんな人の意見が混ざったキャスティングになったと思います。中でもいちばん振り幅が大きいのがしみけんさん(笑)。しみけんさんから清原さんまで幅広い。面白いですよね(笑)。


Q:個人的には加藤雅也さんがツボでとても良かったです。加藤さんとのお仕事はいかがでしたか。


山下:加藤さんと面識はありましたが作品を作るのは初めてでした。岡田くんが決まって、岡田くんのお父さんか…となったときに、ふと加藤さんが思い浮かんだ。岡田くんが相当イケメンなので、加藤さんならつながるかなと。ご本人は関西出身で普段もすごい関西弁、そこもスッとつながりました。オファーしたのは初めてでしたが、「あんまりこういう役やったことないんで…、なんで俺なん?」って言われましたけど(笑)。でも結果良かったです。



『1秒先の彼』©2023『1秒先の彼』製作委員会


Q:ハジメの幼少期を演じた柊木陽太さんも恐ろしく上手でした。『怪物』(23)でも素晴らしい演技でしたが、現場ではいかがでしたか。


山下:陽太くんとレイカの幼少期を演じてくれた加藤柚凪(ゆずな)ちゃんは、二人ともすごかったです。二人ともオーディションに来てくれて決まったのですが、あの二人じゃなかったら恐ろしかったな…と思うくらい、この映画の肝の部分を演じてくれました。下手すればあの現場で一番のプロはあの二人だったんじゃないかな(笑)。とにかく理解度が早い。だけど撮影の準備中は普通の子供に戻っている。プロの部分と子供の部分と両方持っているのがちょっと怖いんですよ(笑)。撮影って待ち時間も長いのですが、ちゃんと待っててくれてすごいなぁと。まさに怪物級の二人でしたね(笑)。




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