(C)mm2 Studios Hong Kong
『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】
若いシングルマザーの姿をどう描写するか
Q：まるで姉妹のようにも見えるキャンディとジューの関係は、ショーン・ベイカーの『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』（17）を想起させます。あの親子について、監督のなかで何かイメージはあったのでしょうか？
ラム・サム：『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は僕も大好きな映画なので、無意識のうちにそこからの影響も少し入っているかもしれません。ただ、どちらかというと、僕の妻とその母親との関係に触発された部分が大きいと思います。義母もシングルマザーとして娘を育てた人ですが、彼女たちの関係を見ていると、伝統的な親子関係というより、友達関係に近いように思えるんです。
それと、自分の周りにいる若くして親になった人たちを見ると、みんな子供を育てながらも、自分もまだまだ遊びたいんだ、という思いを強く持っているようなんですね。そういった感覚を、キャンディたち親子という形によって表したいと思いました。キャンディはまるで彼女自身が子供であるかのように娘と遊んだり、ときには悪ふざけをしたりもする。ただ、いくら子供みたいな性格であっても、やはり親としての責任を負わなければいけないときがやってくる。そのとき彼女はどう対応するのか。そのせめぎ合いを、このふたりのキャラクターによって表現したかったんです。
『星くずの片隅で』(C)mm2 Studios Hong Kong
Q：キャンディの個性的なファッションもおもしろいですよね。
ラム・サム：実はあのファッションが生まれたのは、キャンディ役のアンジェラ（・ユン）さんのおかげでもあります。キャスティングのための最初の顔合わせで、彼女は「キャンディならきっとこういう服装をするんじゃないか」と考え、映画のなかで着ていたような非常にカラフルな服装でやってきたんです。その姿を見て、僕も「なるほど、たしかにキャンディはこういう人かもしれない」と考えるようになりました。
キャンディは金銭的な余裕がないので、おそらくいつも安売りの店にしか行っていない。そのなかでも普通なら売れ残りそうな服、蛍光色や、びっくりするような奇抜なデザイン、そういうものを買うんじゃないか。一般的に、シングルマザーの女性は金銭的に苦しく、地味で目立たない格好をしているはずだというイメージがある。でも、たとえお金がなくても、自分なりの努力でどうにかしておしゃれをする母親だって当然いるし、キャンディのように若い母親ならなおさら洋服やアクセサリーにはこだわるはず。そういう背景を考えながら、衣装の方たちと一緒に、ああいうカラフルで派手な服装をつくりだしていきました。
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