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『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】

(C)mm2 Studios Hong Kong

『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】

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いま、香港映画界では新たな波が起こりつつあるようだ。新世代の監督たちが台頭し、香港で暮らす人々やいまの社会事情を反映した意欲作を次々に発表、興行的にも大きな成功をおさめているという。実際、2023年の大阪アジアン映画祭でも、オープニングを飾った『四十四にして死屍死す』から、コンペ作品の『白日青春』『香港ファミリー』など、新人監督たちによる多様な映画が上映され、大きな注目を集めていた。


やはり大阪アジアン映画祭コンペ部門で上映され、このたび劇場公開される『星くずの片隅で』(映画祭タイトル『窄路微塵』)のラム・サム監督も、香港映画の新世代を代表するひとりだ。『少年たちの時代革命』でレックス・レン監督と共同監督を務めたラム・サム監督にとって、本作はこれが単独初長編ながら、香港で大ヒット。台湾アカデミー賞では3部門、香港アカデミー賞では10部門にノミネートされた。


2020年の香港を舞台にした『星くずの片隅で』は、コロナウィルスの感染拡大により静まり返った街の風景をリアルに捉えながら、市井の人々が当時陥っていた苦境と、それを乗り越えようともがく姿とを、目をそらすことなくまっすぐに描き出す。現在はイギリスで生活しているラム・サム監督に、本作の制作背景と、そこに込めた思いをうかがった。



『星くずの片隅で』あらすじ

2020年、パンデミックにより人々の往来が消えた香港の街で、清掃会社「ピーターパンクリーニング」を経営するザク(ルイス・チョン)は、日々消毒作業に追われていた。そんなある日、若い女性のキャンディ(アンジェラ・ユン)が、仕事を求めてやってきた。ザクは、素人を雇う余裕はないとすぐに断るが、キャンディがひとりで娘のジュー(トン・オンナー)を育て、本気で仕事を求めていると知り、正式に彼女を雇うことに。やがてザク、キャンディ、ジューは家族のように仲を深めていくが、ちょっとしたアクシデントが大きな悲劇を呼ぶことに……。


Index


パンデミックによって脚本に加えられた変更点



Q:『星くずの片隅で』の構想は、もともと2018年からスタートしたと伺っています。完成した映画では、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大が始まり、ザクやキャンディのような労働者たちが、大きな苦境に陥った姿を描いています。パンデミックを通して、どのように話が変わっていったのでしょうか?


ラム・サム:清掃会社を舞台にするという案は、2018年の段階ですでに決まっていました。当時脚本家と打ち合わせしているとき、香港では賃金や労働時間の改善を求める清掃業者たちによる大規模なデモが行われていて、ぜひ彼らの物語を書いてみたいと思ったんです。ですから、清掃会社「ピーターパンクリーニング」を運営するザクという主人公がいて、キャンディとジューの親子に出会う、というおおまかなストーリー自体は当初から変わってはいません。ただ、具体的な場面や設定には、コロナ禍を通して様々な変更点が加わることになりました。


一番はやはり消毒作業のくだりですね。ルイス・チョン演じるザクが、企業やお店から仕事を請け負って消毒作業をする、これは当初はまったく考えていないシーンでした。また劇中では消毒用の洗剤がなかなか手に入らないという問題が起こり、そのことが物語を大きく動かしていきますが、これもコロナ禍で起きた現実の物流問題などを踏まえ付け加えたものです。



『星くずの片隅で』(C)mm2 Studios Hong Kong


キャンディたち親子のキャラクターについても、やはり細かい部分でいろいろな要素が加わったり、変更することになりました。彼女たちが家賃を滞納して元々住んでいた場所を出て行かざるを得なくなりホテルに移り住む、という展開がありますよね。もしかすると、アパートの家賃も払えないのに、なぜ安宿とはいえホテルに泊まれるのかと疑問に思う人もいるかもしれませんが、これは、コロナ禍の香港で実際に起きていた出来事なんです。当時の香港は観光客がまったくいなかったので、ホテルの宿泊料がどんどん値下がりし、ときにはホームレスの人たちに無料に近い形で部屋を提供することもありました。あの時期は、むしろお金がない人こそホテルに泊まれたという特殊な事情があり、それを映画にも反映したわけです。





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