1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】
『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】

(C)mm2 Studios Hong Kong

『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】

PAGES


人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか



Q:この映画の素晴らしい点のひとつは、ザクが誠実さを手放さないことです。彼はどんな困難があっても、誠実さを手放さず、キャンディたちを信じつづけます。人の良心を信じ抜くこと、それがラム・サム監督が映画を撮るうえでの信念ではないかと感じたのですが、いかがでしょうか。


ラム・サム:そうですね、やはりこのストーリーの背景にコロナがあったのが大きかったと思います。映画の構想自体は2018年から始まりましたが、その後に起きた清掃業者たちによる大規模なデモ活動が脚本に大きな影響をもたらしました。そして2020年から感染拡大が始まった。この数年間、香港は本当に大きな政治の転換期にあったわけです。そういう状況のなかで、人々はみなお互いを信じられない環境に置かれてしまったように僕は感じています。だからこそこの映画では、人はどうすればもう一度お互いを信じ合えるのか、という主題を描きたかった。人の良心を信じ抜くことが物語に組み込まれていったのも、自然な流れだったわけです。



『星くずの片隅で』(C)mm2 Studios Hong Kong


映画の撮影時(2021年)におけるスタッフやキャストたちの団結力は、本当に力強いものでした。当時の香港では映画の撮影自体がほぼストップしていたので、チームのみんなもここ以外には仕事がない状態で、不安であると同時に撮影できることが嬉しくて仕方ないというような、とても濃密な信頼関係が出来上がっていたように思います。僕自身、スタッフはもちろんのこと、演じてくれた俳優たち、特に主演の二人に対してはこの上ない信頼を寄せていました。


本来ならば、映画の撮影が始まる前には脚本や段取りなどはすべて完璧に用意するのですが、今回は、明日の状況がどうなるか誰にもわからないという特殊な環境でもあり、撮影中もスタッフや俳優たちと話し合いながら、次にどうするか決めていく場面が多くありました。俳優が演じながらどういう気持ちを抱いたのか、率直な意見を聞いて脚本を書き直すことも何度かありました。大変なことは多かったですが、スタッフからも「こんなに楽しい現場を体験したのは久々だ」とも言ってもらえましたし、お互いを信頼し合えるチームで働けて本当によかったと思っています。



『星くずの片隅で』を今すぐ予約する↓






監督:ラム・サム(林森 LAM Sum)

1985年生まれ。香港演芸学院電影電視学院演出学科卒業。短編映画やドキュメンタリー映画の制作のほか、映画制作の講師としても活動。代表作に短編『oasis』(12)、共同監督作『少年たちの時代革命』(21/日本公開22年)など。本作が初の単独長編監督作。2022年よりイギリス・ロンドンを拠点に活動する。



取材・文:月永理絵

映画ライター、編集者。雑誌『映画横丁』編集人。『朝日新聞』『メトロポリターナ』『週刊文春』等で映画評やコラム、取材記事を執筆。〈映画酒場編集室〉名義で書籍、映画パンフレットの編集も手がける。WEB番組「活弁シネマ倶楽部」でMCを担当中。 eigasakaba.net




『星くずの片隅で』

7月14日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ポレポレ東中野ほか全国ロードショー

配給:cinema drifters・大福・ポレポレ東中野

(C)mm2 Studios Hong Kong

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『星くずの片隅で』ラム・サム監督 人はどうすればまたお互いを信じ合えるのか 【Director’s Interview Vol.334】