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『私たちの声』呉美保監督 名も無き作業で溢れる母親たちの一週間【Director’s Interview Vol.345】

『私たちの声』呉美保監督 名も無き作業で溢れる母親たちの一週間【Director’s Interview Vol.345】

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名も無き作業で溢れる一週間



Q:脚本を作るにあたり、着想の原点があれば教えてください。


呉:日本は先進国なのにジェンダーギャップ指数が世界でも最底辺。日本の社会では子供を産む・産まないにかかわらず、女性が社会の中心になって、やりたいことを思いきりやれる環境にはまだまだない。そんなときにふと思ったのが、自分が今生活している姿でした。自分が生きているこの世界が、まさに日本のジェンダーギャップを表しているなと。


そこで脚本を書くにあたり、自分はどうやって一週間生活しているのか、ディティールを書き出すことから始めました。例えば洗濯一つとってもいろんな作業があるんです。洗濯機に入れて回す、取り出して干す、乾いたら取り込む、ハンガーから外して畳む、畳んだらしまう。そういった様々な作業が洗濯という一言に詰まっている。ご飯を作るのも同じです。ちゃんとした時間に夕飯を食べさせたいと思ったら、そこから逆算して仕事を終わらせて、子供を保育園にお迎えに行く。食材はそれまでに準備しておかねばならず、それを切って、煮て、焼いて、ご飯を炊いてと、本当に名も無き作業がいっぱいあるんです。



『私の一週間』©WOWOW


これは夫婦間でよくある話だと思いますが、お父さんが子供をお風呂に入れたとしても、外で取り上げて体を拭いて、保湿して服を着せて、頭を乾かしてあげるのはお母さん。それでも男の人は「お風呂に入れた」と言いきる。そういう噛み合わないところもいっぱいありますよね。子供が病気で保育園を休むときも、病院を予約し、保育園に連絡して、置きっぱなしだった荷物を取りに行き、などなど、細かい作業が本当に多い。そういう一覧を作って映画にして、世の中のお父さんたちに伝えたいって思ったんです。ただ…、こういうことをあまり言い過ぎると「耳が痛い…」と言われて終わることが多いのですが(笑)。でも“知る”ということはすごく大事ですよね。


子供を産んで初めて、こういった生活に追われるようになりましたが、人間を育てることの責任を日々痛感しています。仕事を終えて夕方帰る頃には、「今日は寝かせつけまでうまくいくかな?」って動悸がするくらいです。ジェンダーギャップ指数を鑑みると、同じ思いの人たちは多いのではないでしょうか。





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