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『私たちの声』呉美保監督 名も無き作業で溢れる母親たちの一週間【Director’s Interview Vol.345】

『私たちの声』呉美保監督 名も無き作業で溢れる母親たちの一週間【Director’s Interview Vol.345】

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緊張感と自覚の問題



Q:杏さん演じるユキの一週間の生活を見るだけなのに、気づくことが多かったです。自分も含めて反省と後悔をする父親は多いと思います…。


呉:子供が大きくなってしまうと、もう時間は戻せませんよ(笑)。しっかり歩くことができる3歳ころまでは、子供は本当に手が掛かるんです。「産後クライシス」という言葉がありますが、子供が3歳になるくらいまでに夫婦がどれだけ育児に対して共有できたか、それがお互いの信頼関係に大きく影響してきます。3歳までに信頼関係が築けなかった場合は、女性の方が諦めの境地に入ってしまう。子供が育ったら「ありがとう、さようなら」ってなりかねない。これは他人事ではないと思いますし、そうならないように努力はしたいですよね。



『私の一週間』©WOWOW


Q:自分もそうでしたが、父親は子供の夜泣きに全く気づかないという、けしからん対応を思い出します。


呉:男と女は生物学的に違っていて、女性は子供の夜泣きに気づく体になっているが男性は気づかない作りになっていると、親の世代から聞かされたりもしましたが、私は絶対に違うと思うんです。もし父親と子供の二人きりで寝た場合、夜泣きされると間違いなく起きる。単に緊張感と自覚の問題ですよね。


また、同じく自分たちの親の世代から、「女は可愛く男をおだてて褒めとけばいいのよ」みたいなことも言われたりもしますが、上の世代はそういう感覚が染み付いちゃっているんでしょうね。男女の関係に上下はなく、フェアでフラットな関係なのだということを、皆が認識できればいいなと。


今は父親がオムツを替えるのは普通のことですが、私たちの父親の世代なんて絶対変えたことないですよね。でもそう考えると随分進化してきていると思います。そんなことも、こうして口に出して言える時代になってきたので、皆が前向きに知っていくことは大事なことだと思います。



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監督:呉美保

初長編脚本『酒井家のしあわせ』(06)で、サンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞し、映画監督デビュー。『オカンの嫁入り』(10)で新藤兼人賞金賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(14)で、モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門最優秀監督賞を受賞、併せて米国アカデミー賞国際⻑編映画賞日本代表に選出。本作は『きみはいい子』(15)以来、8年ぶりの監督作となる。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『私たちの声』

9月1日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

配給:ショウゲート

©2022 ILBE SpA. All Rights Reserved.

©WOWOW

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