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『私たちの声』呉美保監督 名も無き作業で溢れる母親たちの一週間【Director’s Interview Vol.345】

『私たちの声』呉美保監督 名も無き作業で溢れる母親たちの一週間【Director’s Interview Vol.345】

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世界の映画界で活躍する女性監督と女優が集結し、女性が主人公の7つのショートストーリーを紡ぎ出した映画『私たちの声』。「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンとして掲げる非営利映画製作会社<We Do It Together>が企画し、実際の出来事に着想を得たエピソードから、物語仕立てのフィクション、アニメーションまで、世界各地を舞台に感動的で力強い物語が描かれる。


日本からは、『きみはいい子』(15)以来8年ぶりにメガホンをとった呉美保監督が、女優・杏と共に『私の一週間』を作り上げた。そこでは、何気ない一週間を過ごす母子がドキュメンタリータッチで描かれ、日常の中にある大きな違和感が、ゆっくりさりげなく炙り出されていく。呉美保監督は本作にどんな思いを込めたのか?話を伺った。



『私たちの声 / 私の一週間』(呉美保監督PART)あらすじ

ユキは、アヤとトワという2人の子どもたちを育てるために、毎日休みなく働く。ユキの朝はせわしなく始まる。朝食を作り、洗濯をし、掃除機をかけ、アヤを小学校へ送り出した後にトワを保育園へ送り届け、経営するお弁当屋に。夕方に子どもたちを迎えに、習い事に連れて行く。帰宅すると夕食を作り、風呂、寝かしつけのあと、新しいお弁当のメニューを考え、日が変わった頃に眠りにつくという多忙なルーティンを繰り返す。


Index


映画作りに戻れるのか?抱え続けた葛藤



Q:今回の依頼を受けた経緯を教えてください。


呉:WOWOWの鷲尾プロデューサーからお話をいただいた当時、私は二人目の子を産んだ直後で、上の子供もまだ5歳。ずっと映画を撮っていない状況でした。長編映画の監督はすごく大変なので、育児をしながら出来る自信が持てなかった。自分は映画作りに戻ることが出来るのだろうか? 出来ないと思っているだけではないか? でも映画作りを始めたら子供といる時間はなくなってしまう…。そういった葛藤をずっと抱えていました。


そんな中いただいたこのお話は、短編映画でテーマがジェンダーギャップ。しかも納品まで時間が無いので、短期集中でやることができる。もうこれは、神様が「やれ!」と言っているのではないかと(笑)。それで参加させてもらいました。



『私の一週間』©WOWOW


Q:制作にあたりルールやガイドラインなどはありましたか。


呉:女性監督と女優を起用して、それぞれの国のジェンダーギャップをテーマに短編映画を作る。それ以外は自由でしたね。ただ、アメリカのプロデューサーから、「毎日を淡々と描くドキュメンタリータッチも良いが、最後には映画としてのエモーションが欲しい」と言われたので、最後に少しドラマ的な表現を追加しました。それまで描いた日常にすごいサプライズが来ても無理があるので、有り得る範疇でドラマ性を持たせました。





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