鶴岡監督のリズムを大切にした
Q：非常に丁寧に撮られていて、急かされることなく着実に編集している印象があります。映画のテンポやペースは最初から想定通りだったのでしょうか。
鶴岡：美也子という主人公自体がのんびりしているので、映画ものんびりしたペースになるなと。それは最初から思っていました。編集の普嶋信一さんも同じ思いだったようで、特に私から何を言わずとも、普嶋さんなりに繋いでくださってこのテンポになっていました。
盛：撮影に立ち会っていない編集マンの客観的な目線で、「これだけゆっくり見せても絶対大丈夫！」と言ってくれたので、かなり安心しました。プロデューサーは「切れ切れ！」言いがちなので、いつも嫌われるのですが…（笑）。今回は自分自身もうちょっと見たいと思ったので、これは切ってはダメだなと。
鶴岡：今回はプロデューサーの皆さんが寛大で、「鶴岡さんだから、そのまま（切らなくて）いいよ」とおっしゃってくれました（笑）。
盛：脚本作りから撮影、編集まで、監督のリズムを大事にするというのは一つのテーマでしたからね。
『バカ塗りの娘』(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会
Q：美也子は感情をあまり表に出しませんが、それでも気持ちの揺らぎが大きく伝わってきます。美也子を演じた堀田さんとは、どんなことをお話しされて演出されたのでしょうか。
鶴岡：お芝居のキレが少しでも良くなると、私がそれを打ち消していく感じでした（笑）。「もっとのんびり、もっとゆっくり、もっとボーっとしてください」とずっと言っていましたね。ちょっとした表情も違うなと思ったら、「そこ、筋力ゼロでお願いします」みたいな（笑）。とにかく最初は「何の力も入れないでください」と演出させてもらって、その後は彼女自身が掴んだ感じでやっていただきました。わりと我慢のお芝居だったと思います。
Q：全編通してそのトーンを維持することは難しくなかったですか？
鶴岡：最初の方でコツコツした塗りのシーンを撮り、ドラマパートは後半に撮っていったので、堀田さんの中でも感情の流れを作れたようでした。無理なく撮れたかなと思いますね。
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