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  3. 『バカ塗りの娘』鶴岡慧子監督×盛夏子プロデューサー 大切にしたのは鶴岡監督のリズム【Director’s Interview Vol.346】
『バカ塗りの娘』鶴岡慧子監督×盛夏子プロデューサー 大切にしたのは鶴岡監督のリズム【Director’s Interview Vol.346】

『バカ塗りの娘』鶴岡慧子監督×盛夏子プロデューサー 大切にしたのは鶴岡監督のリズム【Director’s Interview Vol.346】

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塗っては研いで、塗っては研いでをひたすら繰り返す、日本が誇る伝統工芸“津軽塗”。漆が丁寧に塗り重ねられるように、本作『バカ塗りの娘』もまた、津軽塗の完成までの工程をひとつひとつ丁寧に映し出していく。そんなゆっくりしたペースの中でも、伝統工芸が抱える問題から家族の関係まで、きっちり描きあげる鶴岡監督の手腕が見事だ。伝統工芸というテーマと鶴岡監督を引き合わせた、盛プロデューサーの差配の賜物だろう。


鶴岡監督と盛プロデューサーの二人は、いかにして本作を作り上げたのか?話を伺った。



『バカ塗りの娘』あらすじ

青森県弘前市。津軽塗職人の青木清史郎(小林薫)と父の仕事を手伝う娘・美也子(堀田真由)が、年季の入った工房で作業をしている。美也子は、高校卒業後、特にやりたいことが見つからず、家計を助けるために近所のスーパーで漫然と働きながら家業を手伝っていた。父・清史郎は、文部科学大臣賞を獲ったこともある津軽塗の名匠だった祖父から津軽塗を継いだが、今は注文も減ってしまい、さんざん苦労しているようだ。そんな青木家は、工房の隣に建つ自宅で父娘の二人暮らし。家族より仕事を優先し続けた清史郎に愛想を尽かして、数年前に家を出ていった母(片岡礼子)。家業を継がないと決め、美容師となった兄・ユウ(坂東龍汰)。気づけば家族はバラバラになっていた。幼い頃から漆に親しんできて、津軽塗の仕事が好きだが、堂々とその道に進みたい、と公言できずにいた美也子だったが、ある日、父に久しぶりの大量注文が入り、嬉々として父の手伝いをすることに。しかし、清史郎は津軽塗をやっていくことは簡単じゃないと美也子を不器用に突き放す。それでも周囲の反対を押し切る美也子。その挑戦が、バラバラになった家族の気持ちを動かしていく――。


Index


伝統工芸に対する価値観を変えたい



Q:なぜ津軽塗の話を映画にしようと思われたのですか。


盛:ものを作る工程が昔からすごく好きで、宮古島の宮古上布という織物の映画を作ったことがあるくらいです。今回の原作「ジャパン・ディグニティ」は、若い女性の話で、かつ伝統工芸の話でもある。これはぜひ映画にしてみたいなと。


実は伝統工芸品は最近あまり売れていないのですが、その理由の一つに高価だということがあります。一つ作るのにかなりの手間がかかるため高価になるのですが、聞くだけではなかなかわからないこの事実を、説得力ある映像で表現したい。伝統工芸に対する価値観を、この映画で変えることができればと思いました。



『バカ塗りの娘』(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会


Q:企画はスムーズに通りましたか。


盛:このサイズの映画は企画を通すのがなかなか大変で、とにかく脚本を磨き、誰に読ませても「これは乗ってみたい」と思うものにしなくてはならない。2018年の秋に原作権の契約を交わし、鶴岡監督にオファーしたのもその頃ですから、結構時間が掛かりましたね。海外展開を得意としているメ〜テレさんにお声がけしたところ、鶴岡監督のことをすごく買ってくれて乗ってくださった。やっとそこから具体的に動き出していきました。


鶴岡監督へのオファーはかなり初期段階から考えていました。学生時代の作品や『過ぐる日のやまねこ』(14)を拝見して、そこから『まく子』(19)を拝見したときに、すごくステップアップされた感じがして、「この原作をこう解釈をされるのか」と驚きました。監督に相談したところ快諾いただき、すごく嬉しかったですね。




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