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『バカ塗りの娘』鶴岡慧子監督×盛夏子プロデューサー 大切にしたのは鶴岡監督のリズム【Director’s Interview Vol.346】

『バカ塗りの娘』鶴岡慧子監督×盛夏子プロデューサー 大切にしたのは鶴岡監督のリズム【Director’s Interview Vol.346】

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キャラクターイメージを固めすぎない



Q:美也子、父の清史郎、兄のユウと、家族3人の関係性や距離感が絶妙でした。それぞれを演じた小林薫さんや坂東龍汰さんとはどのようなことを話されたのでしょうか。


鶴岡:清史郎に関しては、私もイメージはあったのですが、小林さんがいろいろ考えて提案してくださいました。尚人(宮田俊哉)が家に訪ねて来てユウと父親が衝突する場面では、事前に小林さんから意見をいただき、「なるほど、そうか」と勉強させていただきました。眉毛が下がるぐらいのちょっとした仕草だけで、いろんなことが伝わるお芝居をしてくださるので、すごいなぁと思いながら撮っていました。現場で私が言うことは何も無かったですね。


坂東さんは、普段のまま、お芝居するのが楽しくてしょうがないという感じが出ていて、それをそのまま撮らせていただきました。何だか“野生の役者”みたいな感じがするんです(笑)。


盛:小林さんはじめ役者の皆さんは、ご自身なりの解釈をされて現場に来られていて、そこで監督がポンと一押しするような、そんな感じがありましたね。また、坂東さんや片岡礼子さん、鈴木正幸さんまで、皆さん脚本を読んですぐ「やりたいです」と仰ってくださった。そこは嬉しかったですね。



『バカ塗りの娘』(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会


鶴岡:役作りに関しては役者さんがプロなので、こちらのイメージで固めすぎないようにしています。私だけで作ってしまうと、見たことあるキャラクターになってしまう気がするんです。その人がどういう表情でどんな声で喋るのか、まずそれを見せていただき、そこから調整させてもらっています。


堀田さんが昔の写真を見るシーンで、涙が一筋流れたタイミングで芝居を変える演出をしたことがありました。涙がこぼれて雰囲気が出た瞬間に「一瞬笑ってください」とお願いしたんです。堀田さんは「え、今このタイミングで笑うの⁉︎」と戸惑われたのですが、その戸惑った表情がとてもよかった。実はそのシーンには続きがあって、写真を見ている堀田さんの背後に父親がやってくるのですが、その何とも言えない気まずさが、その戸惑いの表情にとても合っていました。私としては「やった!」と思ってOKを出しましたが、堀田さんはいい迷惑だったかもしれません(笑)。




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監督:鶴岡慧子

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。大学では万田邦敏監督に師事する。卒業制作の初長編映画「くじらのまち」が第34回「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード2012」グランプリとジェムストーン賞(日活賞)をW受賞。大学卒業後は東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進み、黒沢清監督に師事する。1年目に撮った「はつ恋」が「第32回バンクーバー国際映画祭」でタイガー&ドラゴン賞にノミネートされ、2014年に第23回PFFスカラシップ作品「過ぐる日のやまねこ」で劇場デビュー。同作品は、「第15回マラケシュ国際映画祭」にノミネートされ審査員賞を受賞した。2019年、映画「まく子」が話題となり、若手注目の監督である。





企画プロデュース:盛 夏子

早稲田大学政治経済学部卒業。1996年日活株式会社入社。2003年株式会社アミューズ入社。『カリスマ』(2000黒沢清監督)、『嫌われ松子の一生』(2006中島哲也監督)などにてAPをつとめる。プロデューサーとして『きみのためにできること』(1999篠原哲雄監督)、『いちばんきれいな水』(2006ウスイヒロシ監督)、TVドラマ「深夜食堂」シリーズ1-5(2009-2019松岡錠司監督ほか)、『映画 深夜食堂』(2015)『続・深夜食堂』(2016ともに松岡錠司監督)、NHK-BSP連続ドラマ「すぐ死ぬんだから」(2020)、「今度生まれたら」(2022)、NHK-BS4Kドラマ「おもかげ」(2023)など。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





『バカ塗りの娘』

9月1日(金)シネスイッチ銀座ほか全国公開

配給:ハピネットファントム・スタジオ

(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

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