観察することが私の原点
Q:物語を生み出すときに、最初の発想はどこから出てくるのでしょうか。
アニオビ:毎日の暮らしや、人生を歩む中での経験から出てきます。面白い物語を考える人は、すごく豊かな人生を送っていると思うんです。豊かというのは、すごい冒険をしているという意味ではありません。カフェに座っていたとしても、周りの音を聞くだけで豊かな経験が出来る。私は移民の両親から生まれて、昔はわりと内向的だったので、前に出ていくことよりも人の話を聞くことの方が多かった。そうやって話を聞いていると色んなキャラクターに出会えるんです。必ずしも自分を真ん中に置いてなくていい、話を聞いて観察をすることによって、すごく面白い人生が送れる。ストーリーを考える上では、観察することが私の原点ですね。
エイミーさんのセミナー「The Storyteller's Mindset: Staying Open in a Closed-Off World」の様子
Q:「storytelling」の「story(物語)」を脚本家が作り、監督が「telling(語る)」するという役割分担が一般的ですが、脚本家として監督として、それぞれどのように「storytelling」と対峙していますか。
アニオビ:脚本、監督と、それだけを専門にやる人であれば、そこの違いはあるのかもしれませんが、私は脚本・監督の両方をやるので、そこの違いはあまりないんです。脚本家は観客が感じるものを想像しながら言葉を紡いでいきますが、私は書きながら同時にビジュアル化(演出)もしていく感じなんです。
Q:脚本・監督と両方やっていることで、メリット、デメリットなどはあるのでしょうか。
アニオビ:そうなんです。プラスマイナスあるんですよ! 自分で書いたことを監督するとなると、当然やりたいことは見えているわけですが、あまりにもそこに入れ込んでいるので、もしかしたら新しい見方が出来ていないかもしれない。それがデメリットかもしれませんね。
でも逆に、監督だけのオファーが来た場合は、脚本家としての自分の考えを持ち込むことも出来る。つまり今ある脚本に違った見方を入れることが可能となるんです。それはメリットですよね(このメリットは「秘密兵器」と呼ばれています笑)。ただそれは、自分のやりたい方向に持っていくことにもなり、少しワガママにもなってしまうので、そこだけはちょっとデメリットかもしれませんね。