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『愛にイナズマ』石井裕也監督 家族は目の前にいてくれるだけで価値がある【Director’s Interview Vol.367】

『愛にイナズマ』石井裕也監督 家族は目の前にいてくれるだけで価値がある【Director’s Interview Vol.367】

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苦しみや悲しみの逆にある“笑い”



Q:実家に帰る前と実家に帰った後、大きく2部構成になっていますね。


石井:そう、ちょうど1時間10分ずつで分かれていて、2部構成の7章立てなんです。わりと変則的な物語構成なんです。


Q:監督降板やオレオレサギ団とのケンカ、近親者の死など、大きなトピックスをあえて省略する手法も印象的でした。


石井:確かに。今言われて初めて気づきました。今回は大事なところを思いきり省略してますよね。でも脚本からそうなってるんです。何でですかね…(笑)。うーん(※しばし黙考)。


喪失や傷みたいなものが今回の作品ではすごく重要だったのですが、コロナ禍という人類全体が同時に経験した喪失や傷があったからこそ、敢えて見せなくても共有できる気がしたんでしょうね。


Q:今回はコメディ要素が多いですが、意図したものはありますか。


石井:笑えるシーンは意図的に作った感覚があります。でもそれは苦しみや悲しみがモチーフになっているからこそ。だからその逆の“笑い”に、力技で到達したかったのかもしれません。



『愛にイナズマ』©2023「愛にイナズマ」製作委員会


Q:マスクが鼻血でにじむシーンは最高に面白かったです。


石井:あれはCGのスタッフがリアルに作ってくれたんです(笑)。日の丸みたいになっていますが、揶揄しているとか、そういうことではないんです。この何年間かは、皆マスクの下にあるものを想像していたのではないかなと。その下にあるものは人の本音であり本心。そういう表現はできるだけ狙いました。


Q:シネスコサイズの本編に対して、花子や正夫が撮るスタンダードサイズのコントラストが心地よかったです。技術の進化でカメラが良くなってきていることもあり、違うのは画角だけで空気感はボーダレスな感じもしました。


石井:本当にそうですね。そこは今回発見でした。今回はシネスコがいわゆる虚実でいうところの「実」で、4:3のスタンダードサイズの画面が「虚」になっているのですが、それが入り乱れて混在していく。「こんなにうまくいくんだ!」と自分でも発見でした。




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