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『理想郷』ロドリゴ・ソロゴイェン監督 物語を語るために必要な3つのこととは【Director’s Interview Vol.368】

© Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.

『理想郷』ロドリゴ・ソロゴイェン監督 物語を語るために必要な3つのこととは【Director’s Interview Vol.368】

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ゴヤ賞や東京国際映画祭をはじめ数々の映画祭で賞を獲得、ジュリー・テイモアやカトリーヌ・ドヌーヴから絶賛された映画『理想郷』は、スペインを震撼させた実際の事件に基づく物語。田舎と都会の対立という題材から、人間の暗部に潜む、独りよがりな思考、憎悪、凶暴性を暴き出していく。手掛けたのは、前作『おもかげ』(19)がヴェネチア国際映画祭で高く評価された、スペインの新たな才能ロドリゴ・ソロゴイェン監督。本記事ではソロゴイェン監督のオフィシャルインタビューを掲載、ぜひお楽しみください。



『理想郷』あらすじ

フランス人夫婦アントワーヌとオルガはスローライフに夢を抱き、緑豊かな山岳地帯スペイン・ガリシア地方の小さな村に移住する。しかし、ある出来事をきっかけに地元の村人たちと敵対関係が激化していき……。


Index


実際の事件に感化された



Q:本作を作ろうと思った経緯について教えてください。


ソロゴイェン:ガリシア州で、外国人夫婦と地元住民が衝突する事件があったというニュースを聞き、私たち(ロドリゴ・ソロゴイェンと脚本のイザベル・ペーニャ)は、この出来事には人の心を強く揺さぶる映画を作るために必要な要素があるのではないかと直感的に思ったんです。そしてこの事件について調べ始め、一旦その内容から少し距離を置くことで自分たち独自のフィクションへと変身させました。実際に事件に関わっていた人たちのことを知り、彼らの心の動機や彼らが抱いていた夢についても理解したつもりです。だからこそ、名前、年齢、国籍も変えて、フィクションにするために独自のキャラクターを考え始めました。実際にあった物語ではなく、それによって感化された物語として語りたかったからです。


Q:キャラクターはどのように作られたのでしょうか。


ソロゴイェン:最初に考え出したキャラクターは、アントワーヌとオルガ。都会の生活に疲れた50歳前後のフランス人夫婦で、人里離れた美しい村に移り住み、自然に囲まれた生活を始める。まずこの2人のキャラクターを固めた後に、他の要素を決めていきました。



『理想郷』© Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.


Q:物語となる村の設定はどう作られましたか。


ソロゴイェン:2人が住む村は少しずつ過疎化が進んでいて、地元の住民は外国人を疑いの目で見ています。世間に対して怒りを抱く2人の兄弟が、この外国人夫婦に対しても憤りの思いを持つようになるのです。地元の人間とよそ者の対立、「私はここの出身で、あなたは違う」という祖国に対する争いです。


金銭的な問題もありますが、それ以上に土地の所有に関するアイデンティティーの問題も存在します。脅迫、プライド、共存することの難しさ、暴力の勃発、恐怖。最後の2つの要素、つまり暴力と恐怖は、物語の中心的な軸になりました。周囲に存在する暴力と、この夫婦に対する兄弟の暴力。外国人、つまりよそから来て自分たちのものを奪っていく存在を追い出したいと考える村の暴力。そして、自分たちのプロジェクトや将来を心配する夫婦が抱く恐怖。夫が帰宅する度に感じた恐怖。夫の帰宅時間がいつもより遅くなる度に妻が感じた恐怖。手遅れになる前に止めることができず、この対立が悲劇的な結果を招くのではないかという恐怖。これらのことを考えた時点で、この映画を決定的に特徴づける決断をしました。




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