© Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.
『理想郷』ロドリゴ・ソロゴイェン監督 物語を語るために必要な3つのこととは【Director’s Interview Vol.368】
伝統をアレゴリーで描く
Q:よそ者と地元の人間/ヨーロッパ人とスペイン人の衝突を描いた理由を教えてください。
ソロゴイェン:この映画では、よそから来た者と地元出身の人間との共存における問題を描き出します。文化的な衝突は当然のこと、2つの文化が融合することからくる豊かさにも触れています。アントワーヌとオルガは都会の人間です。それもヨーロッパの都市部出身。一方アンタ兄弟は、自分たちの村から出たことがありません。私たちは、何百年も前から歴史のあちこちに見られるお互いへの恐怖や不信感を表現しようと思いました。ヨーロッパの都会人と、スペインの田舎の人間というと、後者がより無知で迷信深く、都会人の方が優れていると考える人が多いかもしれませんが、彼らの対立を浮き彫りにしていくためには、前者と後者では与えられる機会が不公平なほどに違うということや、人の視野が広がるためには、文化が不可欠であるということも表現したかったのです。
『理想郷』© Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.
Q:獣的な人間対理性的な人間という対立もあります。
ソロゴイェン:物語の舞台をどこにしようか考えながら脚本に取り組む中で、ある日近くにある村々で毎年行われている慣習について知りました。それは「ア・ラパ・ダス・ベスタス(野獣の毛刈り)」と呼ばれる祭りで、野生の馬を捕え、寄生虫を除去するためにたてがみを切って、再び山に戻す。「アロイタドーレス(野獣を抑える役目の人)」が馬に飛びかかって格闘しながら押さえ込み、それから優しくたてがみを切る様子は、踊りのようにさえ見えます。人間と動物のどちらかが勝つまで必死で戦う、美しくかつ激しい舞いなのです。混沌から秩序に変わり、それからまた別の馬で同じことを繰り返す。
私たちは、視覚的に心を揺さぶるこの伝統を、物語の中に入れようと決めました。核心にある場面は、この「ラパ(毛刈り)」のアレゴリーで描き出す。ここでいう獣とは誰を指しているのか。また「アロイタドーレス」とは誰のことなのか。アントワーヌは、アンタ兄弟の暴力に直面する時、平静を保とうとしますが、自分自身をそこから切り離すことがどうしてもできません。オルガだけが周囲の男性の暴力に対して理性的に立ち上がり、暴力以外の方法で仲介を試みます。ある場面で彼女は夫に言います。「別の解決方法が必ずあるわ」と。