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『蟻の王』ジャンニ・アメリオ監督 人間のまっとうな権利を主張する勇気【Director’s Interview Vol.369】

©Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)

『蟻の王』ジャンニ・アメリオ監督 人間のまっとうな権利を主張する勇気【Director’s Interview Vol.369】

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人間のまっとうな権利を主張する勇気



Q:LGBTQ+に対する差別の問題は、今日の社会にも強く関連することですが、そうした状況も本作の制作のモチベーションになりましたか。


アメリオ:はい。映画の主題は人々の、そのアイデンティティの違いに対する差別です。今日、コミュニケーションという点で我々の社会は大きく変わってきていますが、人間の権利というものはおろそかにされている。そして世界はますます悪意に満ちてきている。なぜかはわかりません、否、多くの理由があるのでしょう。嫌悪、不寛容、自分と異なる価値観を認めない傲慢さ、未熟さ。我々がニュースで毎日目にすることは悲惨なことばかりです。もっとも無防備なのは、女性と子供、そして同性愛者たちでしょう。だからこそ、今こういう作品を作りたいと思いました。


Q:ただ、映画のなかのアルド・ブライバンティは、決して好感度の高い人物というわけではありません。生徒たちに対してはちょっと高圧的で傲慢なところもあり、裁判でも最初は黙秘を続け印象を悪くしてしまいます。こうした人物に描いた理由とは?


アメリオ:おっしゃる通り、わたしは彼を決して好人物として描こうと思ったわけではありませんでした。彼を聖人にする気はなかった。裁判で彼が最初黙秘を続けたのは、実際の通りです。彼は自分自身を弁護する必要があると感じるまで、ちゃんと質問に答えることがなかったのです。



『蟻の王』©Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)


でもジョヴァンニ・サンフラテロ(映画の中の役名はエットレ)とは本当に愛し合っていたと思います。ジョヴァンニは最後まで、アルドから教唆されたわけではない、自分の意思だったということを法廷で主張しました。彼は自分の家族によって病院に送られ、監禁され、ショック療法を受けさせられた。おぞましいことです。


Q:この映画を観た観客にどんなことを感じて欲しいですか。


アメリオ:わたしの映画が観た人に勇気を与えることを望みます。人間のまっとうな権利を要求することを忘れてしまった、あるいはその勇気を持たない人々を鼓舞するようなものであって欲しい。わたしが以前聞いた話で、地方の同性愛者の教師が、自分の性癖が人に知られたら職を失うのではないかと恐れて公言できないとか、十代の少年ふたりが道でキスしているのを見た婦人が警察に電話して、それがきっかけで片方の少年が自殺してしまったという話がありました。悲惨なことです。彼らを取り巻く社会、家庭や学校にも問題があるのでしょう。とにかく、この映画を観て、同じような立場にいる人々が声をあげて闘う勇気を持ってもらえたらと思います。




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