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『蟻の王』ジャンニ・アメリオ監督 人間のまっとうな権利を主張する勇気【Director’s Interview Vol.369】

©Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)

『蟻の王』ジャンニ・アメリオ監督 人間のまっとうな権利を主張する勇気【Director’s Interview Vol.369】

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大島渚監督は、大切な友人でした



Q:あなたは20歳からアシスタントとして、映画界やテレビ業界で仕事を始められましたが、監督になりたいと思ったきっかけは何でしたか。


アメリオ:小さい頃から映画が大好きだったのです。映画を観るのも、映画について書かれたものを読むのも好きでした。好きな作品はたくさんありますが、わたしにとって大切な存在のひとりに、大島渚監督がいます。1970年、わたしが25歳のときに、イタリアで大島渚のレトロスペクティブがあって、そのときに作品をたくさん観て、素晴らしいと思いました。その後彼とは何度か会う機会があって、大切な友人になりました。1994年に『Lamerica』というわたしの作品が、ヴェネチア国際映画祭のコンペティションに選ばれたとき、ちょうど彼が審査員のひとりだった。そのときに監督賞を頂いて、彼がトロフィーを授与してくれた。忘れられない思い出となりました。



『蟻の王』©Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)


Q:日本映画で他に影響を受けた監督はいますか。


アメリオ:わたしは日本のクラシックな映画をたくさん観ているので、監督としてかなり影響を受けていると思います。自分にとって重要な日本の監督は溝口健二と黒澤明、おそらく黒澤監督の方が世界的には有名かもしれません。そして3人目が小津安二郎監督です。彼はとても洗練された映画を撮る監督として惹かれます。 




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撮影:佐藤久理子 ©Kuriko Sato


監督:ジャンニ・アメリオ

1945年イタリア・カラブリア地方の小さな村に生まれる。2歳の誕生日を迎える前に、当時20歳だった父が家族を残して出奔。以来祖母に育てられる。毎週の楽しみは祖母の連れて行ってくれる映画だったという。大学に進学し哲学を学んだもののドロップアウト。映画監督の夢を追ってローマに移り、ヴィットリオ・デ・シーカのもとで働き始める。1970年にTV作品「LA FINE DEL GIOCO」の監督を務めたのを皮切りに、『1990年』の撮影中のベルトルッチを追ったドキュメンタリー「BERTOLUCCI SECOND IL CINEMA」(75)などを撮る。1982年には、初めての長編映画で、ジャン=ルイ・トランティニャンを主役に迎えた「COLPIRE AL CUORE」を完成させる。続いて、死刑囚と裁判官の関係を軸に、人間の尊厳を問いかける『宣告』(90)では、米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる。孤児院へ向かう幼い姉妹と、その二人を送り届ける憲兵の旅を描いた『小さな旅人』(92)では、カンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞し、「LAMERICA」(94)では、ヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞する。1998年には、時代に翻弄される兄弟の絆を描いた『いつか来た道』でヴェネチア映画祭金獅子を受賞。2004年には、『家の鍵』でヴェネチア映画祭三部門の賞を受賞、米アカデミー賞外国語映画賞のイタリア代表作品に選出されるなど、国際的な受賞歴を誇る。2017年の『ナポリの隣人』で、ナストロ・ダルジェント賞作品賞を受賞。本作は、第79回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品された。40年のキャリアで長編作品14作と寡作だが、ヨーロッパ映画賞最優秀作品賞を『宣告』、『小さな旅人』、「Lamerica」で3度にわたり受賞しており、イタリアのみならずヨーロッパを代表する名匠である。



取材・文:佐藤久理子

パリ在住、ジャーナリスト、批評家。国際映画祭のリポート、映画人のインタビューをメディアに執筆。著書に『映画で歩くパリ』。フランス映画祭の作品選定アドバイザーを務める。





『蟻の王』

11月10日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

配給:ザジフィルムズ

©Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)

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