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『私がやりました』フランソワ・オゾンが優れたバランス感覚で描く社会風刺

© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

『私がやりました』フランソワ・オゾンが優れたバランス感覚で描く社会風刺

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『私がやりました』あらすじ

有名映画プロデューサーが自宅で殺された。容疑をかけられたのは、貧乏な若手女優マドレーヌ。法廷に立たされた彼女は、ルームメイトの新人弁護士ポーリーヌが書いた、「自分の身を守るために撃った」という正当防衛を主張する完璧なセリフを読み上げ、見事無罪を獲得。それどころか、悲劇のヒロインとして時代の寵児となり、アッという間にスターの座へと駆け上がる。豪邸に引っ越し、優雅な生活を始めるマドレーヌとポーリーヌ。しかしそんなある日、とある女が彼女たちを訪ねてくる。彼女の名前はオデット。一度は一世を風靡するも、今や目にすることも少なくなった、かつての大女優だ。そしてオデットの主張に、マドレーヌたちは凍り付く。プロデューサー殺しの真犯人は自分で、マドレーヌたちが手にした富も名声も、自分のものだというのだ。いったい真相は如何に?こうして、女優たちによる「犯人の座」を賭けた駆け引きが始まる――!


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フランソワ・オゾンの真骨頂



 2000年代を最も沸かせたフランスの映画監督といえば、筆頭を飾るのがフランソワ・オゾンなのではないか。『焼け石に水』(00)では唐突なダンスシーンで観客を驚かせ、当時50代だったシャーロット・ランプリングの魅力を感覚的な映像で引き出した『まぼろし』(01)も好評を博すなど、知的でおしゃれ、前衛かつ軽快でキッチュな魅力をも放つ、当時30代の若き才能は、大ヒット作『8人の女たち』(02)にて、一つの高みを制することになったといえよう。


 溢れ出る才能ゆえに、現在までにさまざまなジャンルを横断してきたオゾン監督だが、多くの観客が求めているのは、やはりさまざまな年代の女性たちがきらびやかに登場する、『8人の女たち』のようなタイプの作品だろう。1930年代の戯曲を基にオゾン監督が翻案した本作『私がやりました』(23)は、そんな期待に応え、いかにもオゾン監督らしい、レトロな魅力と新しい感覚がともに発揮された、楽しいサスペンスコメディとなった。



『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION


 冒頭で映し出されるのは、貧困にあえいでいる若手女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)が有名映画プロデューサーである男性の豪邸から一人逃げ出し、パリの街を彷徨い歩くところだ。この時点では観客には説明されていないので、何があったのかは想像する他ない。その後マドレーヌは、プロデューサーを殺害した容疑で裁判を受けることとなる。さまざまな点が、彼女が犯人である疑惑を深める要因となっていたのである。


 マドレーヌを救おうとするのは、彼女とアパルトマンで同室生活を送っている新人弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)。二人の女性は、法廷で女性差別的な検事らと闘い、世間の好奇の目にさらされながら奮闘する。プロデューサーによる性暴力を主張し、女性の権利を勝ち取ろうとうったえ続ける彼女たちは、時代の寵児にまでなり、皮肉なことに貧乏生活を脱して世に名を馳せることとなるのだった。


 しかし、豪華な屋敷で優雅な生活を楽しむようになったマドレーヌとポーリーヌたちに不穏な訪問者がやってくる。それは、かつて人気を誇った大女優オデット(イザベル・ユペール)だった。彼女はなんと自分が本当の犯人であると、二人に主張をし始めるのである。果たして事件の真相はどうだったのか。そして、“真犯人の座”を勝ち取るのは誰なのか……。





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