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『私がやりました』フランソワ・オゾンが優れたバランス感覚で描く社会風刺

© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

『私がやりました』フランソワ・オゾンが優れたバランス感覚で描く社会風刺

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映画と俳優の力



 また、本作といえば不意に差し込まれるヌードシーンについても言及せざるを得ないだろう。これも性暴力を題材とした作品として不適当な描写だという意見もあると思われるが、こういったオゾン作品独特のシーンは、いわゆる“サービスカット”として機能してはおらず、同じくフランスの、画家エドゥアール・マネの名高い作品「草上の昼食」がそうであるように、むしろぎょっとさせる効果を発揮するのである。


 この、一種の異化効果を利用したシーンや、裁判での女性の権利をうったえるスピーチを含め、マドレーヌや女性たちは、目の前の現実に精一杯の“演技”を駆使して対処する。仲の良い親友同士で映画を観ることが、貧しい彼女たちの気晴らしであり、大女優オデットがベテランの妙味を発揮しているように、映画の力、俳優の力が、現実を打開していく力になっているのが理解できる。その意味で本作は、映画讃歌、俳優讃歌となる一作だといえるだろう。



『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION


 また、衣装を担当したパスカリーヌ・シャヴァンヌは、当時の要素を基に、時代考証にはこだわり過ぎず、キャラクターの魅力を引き出すようなデザインで、女性たちの魅力を増幅させている。そして、どうやって撮ったのか分からないほど、見事に1930年代のパリを思わせる街路でのシーンが楽しめるのも、本作の手柄だといえる。パリで撮られている本作だが、一部ボルドーの古い街並みや、ベルギーでも撮影が敢行され、過ぎ去った時代のきらびやかな光景を再現しているのだ。



文:小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter:@kmovie



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『私がやりました』

11月3日(金・祝)、TOHO シネマズ シャンテ他 全国順次ロードショー

配給:ギャガ

© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

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