1. CINEMORE(シネモア)
  2. Actor‘s Interview
  3. 『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』イザベル・ユペール 外見で本人に近づき、演技は自分のアプローチで【Actor’s Interview Vol.33】
『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』イザベル・ユペール 外見で本人に近づき、演技は自分のアプローチで【Actor’s Interview Vol.33】

©2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma

『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』イザベル・ユペール 外見で本人に近づき、演技は自分のアプローチで【Actor’s Interview Vol.33】

PAGES


「フランスを代表する俳優」という表現は、この人には物足りないかもしれない。「世界を代表する俳優」と言ってもいい存在感で輝き続けるのが、イザベル・ユペールである。フランスに限らず、各国の才能と積極的に仕事を続け、昨年(2022年)は「ガラスの動物園」の主役として日本の新国立劇場の舞台に立つなど、彼女の活躍は止まることを知らない。


そのユペールが『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』で演じたのは、フランスの原子力企業アレバ(現オラノ)の労働組合代表を務めたモーリーン。従業員の雇用を守るため会社の上層部と掛け合う彼女が、自宅で何者かに襲われる。事件の背後に原発企業も絡む国家的スキャンダルが見え隠れするなか、すべてモーリーンの自作自演ではないかという疑惑も生まれ、信じがたい展開へとなだれ込んでいく問題作。驚くべき実話の映画化であり、俳優としての技術や経験がハイレベルで試される役に、イザベル・ユペールはどのようにアプローチしたのだろうか。


Index


フランス人の自分も知らなかった衝撃事件



Q:このモーリーン・カーニーの事件は、そもそもフランスでは誰もが知っているものだったのでしょうか?


ユペール:いえ、じつはフランスでもそれほど有名な事件ではないと思います。私も今回、監督のジャン=ポール・サロメからこの映画を依頼され、原作としてル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール(報道週刊誌)という雑誌のジャーナリストが書いたノンフィクションの本を読んで初めて知ったくらいです。事件当時、様々なメディアには取り上げられたようですが、私の耳には入ってこなくて、おそらく私のような人は多かったはずです。


Q:自分が演じるかどうかは関係なく、冷静にこの事件をどう受け止めましたか?


ユペール:「演じることは別にして」という質問には答えられません。なぜなら私はこの人物を演じるという前提で、原作を読んだからです。そのような動機のため、フィクションとしての要素に注目せざるを得なかったのです。事実をそのまま映画にするわけではなく、あくまでも私たちによる“作りもの”になると信じていましたから。



『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』©2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma


Q:では自ら演じるという気持ちをふまえ、この事件のインパクトは?


ユペール:モーリーン・カーニーが遭遇した暴行事件には、あまりにも強烈なストーリーが備わっています。本人にとって予想外であり、レイプと呼ばれる状況としても非常に野蛮です。ただしそのシチュエーションには奇妙な点も多く、「彼女が嘘をついているのでは?」と疑われてしまうことも理解できました。そして今日に至るまで犯人像が見えないという点から、ものすごく特殊な事件だと感じます。さらに注目すべきは、政治的、経済的な側面も絡んだ事件であるということ。当時、この事件には陰で大きな権力を握るミステリアスな人たちも関わっており、演じるうえで、つまり映画を作るという前提から、それらの情報に驚いたのは事実です。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Actor‘s Interview
  3. 『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』イザベル・ユペール 外見で本人に近づき、演技は自分のアプローチで【Actor’s Interview Vol.33】