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『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』イザベル・ユペール 外見で本人に近づき、演技は自分のアプローチで【Actor’s Interview Vol.33】

©2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma

『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』イザベル・ユペール 外見で本人に近づき、演技は自分のアプローチで【Actor’s Interview Vol.33】

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あまり有名ではない実在の人物は演じやすい



Q:実在の人物を演じる場合、演技のアプローチは変わるものですか?


ユペール:実在の人物も、フィクションの人物も、映画で演じるうえでそれほど大きな違いはありません。実話の映画化だけでなく、たとえば小説の映画化でも、作る側、演じる側の主観が入ります。ですからアプローチはあまり変わらないんじゃないでしょうか。モーリーン役の場合でも、私が他の役を演じる際に保つ自分との距離感と同程度でした。実際には役を理解するために感覚はどんどん近づきますが、モーリーンと私はまったく似ていないので、一定の距離感がキープされたと思います。


Q:ただ、あなたが実在の人物を演じるのは、ちょっと珍しいケースですよね。


ユペール:そうかもしれませんが、たとえばクロード・シャブロル監督の『ヴィオレット・ノジエール』(78)で演じたのは実在の人物です(カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したユペールの出世作)。私は、あまり知られていない実在の人物に興味が湧くようです。有名な人物の伝記映画ですと、その人物が“集団記憶”としてイメージが定着していますから、自ずとハードルも高くなり、警戒心が強まって躊躇してしまうわけです。逆に今回のモーリーンのように、そこまで有名ではない実在の人物なら、私の役作りや演技アプローチをそのまま持ち込めます。



『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』©2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma


Q:モデルとなったモーリーン・カーニーとも直接会ったとのことですが……。


ユペール:モーリーンはこの映画にとても協力的でした。脚本にも口出しをせず、撮影中も注文をつけることはありませんでした。もしかしたら彼女にとってこの映画がセラピーになったのかもしれません。私たちに創作の自由を与えることで、過去から解放されていったように見受けられます。私はモーリーンを演じる際に、あえて曖昧さを残しました。彼女は本当のことを語っているかもしれないし、嘘をついている可能性もある。その判断を観る人に委ねたかったのですが、モーリーンはそんな私のアプローチにもネガティヴな意見を出すことはありませんでした。彼女は知的な人で、本作が人物の二面性を描き、信じる人と信じない人が出てくることを理解していたし、私も映画はそういうものだと思っています。ちなみにモーリーンは、映画のプロモーションの際にも私たちをバックアップしてくれました。





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