アニメ業界を目指す人こそ映画祭に来て欲しい
Q:今回の映画祭で気になるものはありますか。
トゥーミー:高畑勲監督のレトロスペクティブが非常に楽しみです。以前、トロント国際映画祭で『かぐや姫の物語』(13)を観ましたが、本当に素晴らしかった。かぐや姫が月明かりの下、林の中を走り抜けていくシーンがあるのですが、表現豊かに手書きで描かれていて、彼女の怒りや自由への渇望が見事に表されていました。これまで見たこともないような表現だったので、目を見開いて驚愕したことを覚えています。今回のレトロスペクティブでは『かぐや姫の物語』の上映もあるので、とても嬉しいです。
また、トークセッションも楽しみですね。私も参加しますが、「スタジオ地図」代表取締役プロデューサーの齋藤優一郎さんや、カナダ国立映画庁を通して長年お付き合いのあるマイケル・フクシマさんなど、貴重なトークを聞ける良い機会だと思います。アニメーションを学んでいる学生や、アニメーションについて詳しい人やそうでない人も、いろんな人が興味を覚えるような面白い話が聞けると思います。他にもオールナイト上映など、素晴らしいプログラムがたくさんありますね。
そして、フィルムコンペティションも重要ですね。このコンペティションには世界中から色んな作品が集まってきています。期待出来る作品ばかりですよ。
『かぐや姫の物語』©2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK
Q:映画祭は人材育成の一翼を担っている部分もあると思いますが、今頑張っている若手やアニメ業界を目指す人たちに向けてアドバイスをお願いします。
トゥーミー:アバイスとして言えることは、「こういった映画祭に来てください」ということ。映画祭には、この業界を目指している人が大勢来ていますので、そういう人たちと会って話をして友達になってください。そこで育まれた友情は一生モノです。私自身も、昔映画祭で会った人たちと今でも一緒に仕事をしています。そういった生涯の友を是非見つけてください。
そして、トークセッションに参加すること。そこで話をしているのは、この業界で20年、30年と経験を積んできている人たちなので、彼らの話は非常に価値があります。特に後半の質疑応答はとても重要。そこで聞ける情報はネットでは見つけられないものが多い。そこだけのオフレコ話も出てきますしね。そういった話を聞くことは非常に貴重ですし、いろいろなヒントがもらえると思います。
最後に、これは私の仲間のトム・ムーアもよく言っていますが、とにかく“描くこと”です。下手だと思ってもいいんです。良くても悪くても描き続けることが大事。描くことによって、世界や周りを見る目が変わってきます。ずっと描いていると、自然とスローダウンしてきて、注意深く周りを見回したり、様子を伺ったりする観察力が養われます。とにかく描くことを強くお勧めします。そして、今アニメ業界入りすることは、すごくいいタイミングだと思いますよ。