アニメーションが持つ魔法
Q:アニメは子どもから大人まで幅広い層が楽しめて、子どもが映像作品に触れる初期段階の媒体でもあります。アニメーションの持つ力やその存在意義をどのようにお考えですか。
トゥーミー:多くの方が、人生で初めて観たアニメを覚えているのではないでしょうか。そして、そのアニメに影響を受けた人も多いと思います。小さな子供は、最初に触れたアニメーションのキャラクターをまるで友達のように感じて育っていく。それがアニメーションの持つ魔法です。
アニメーションというものは、人間の動きや表情を絵で描くことによって、フィルターを通して濾過していくような作業をしています。そうすることにより、実写に比べてよりキャラクターに入り込むことが出来る。例えば『火垂るの墓』(88)では、二人の兄妹が苦しい思いをしながら暮らしていく姿が描かれますが、これを実写でやってしまうと、あまりにも辛くて内面まで入り込めないと思うんです。重く感じて敬遠されてしまう可能性すらある。アニメーターが愛をもって丁寧に描いているからこそ、あの兄妹に入り込むことが出来て、苦しみながらも二人は強い絆で繋がっていることが分かる。アニメーションだからこそ、あの物語は見られるものになっていると思います。
そういった魔法のような作用をアニメーションは持っています。キャラクターや物語に入り込みやすくすることで、観客をよりキャラクターに近づけてくれる。アニメーションだからこそ繋がることが出来るんです。
『クラユカバ』©塚原重義/クラガリ映畫協會
Q:いよいよ映画祭が始まりますが、今どんなお気持ちですか。*2024年2月取材時。
トゥーミー:本当に楽しみにしています。日本に行くのも新潟に行くのも初めてですし、審査員長を務めるのも初めて。楽しみと同時に重責も感じています。アニメーションを学んでいる学生や、同業者、映画を楽しみにしているファンの方など、多くの人と会えるのを楽しみにしています。「新潟国際アニメーション映画祭」というスペシャルなイベントに参加できることを名誉に思います。
ノラ・トゥーミー
アイルランドのスタジオ カートゥーン・サルーンの初期から、受賞歴のある短編映画やコマーシャルの監督を務め、アカデミー賞®にノミネートされた『ブレンダンとケルズの秘密』ではトム・ムーア監督と共同監督をする一方、幼児向け番組『ウーナとババの島』など数多くのシリーズの開発プロセスを指導した。アカデミー賞®にノミネートされた『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』では、ストーリーとボイスのディレクターを務めた。監督を務めた『ブレッドウィナー』ではアカデミー賞®とゴールデングローブ賞にノミネートされたほか、米国アニー賞の最優秀長編映画(インディペンデント)賞、アヌシー国際映画祭で観客賞、審査員賞など数々の国際賞を受賞。最近では、ニューベリー賞を受賞したルース・スタイルズ・ガネットの絵本にインスパイアされたNetflixオリジナル長編アニメーション『エルマーのぼうけん(My Father's Dragon)』を監督。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
第2回新潟国際アニメーション映画祭
Niigata International Animation Film Festival
主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会 企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
会期:2024年3月15日(金)〜20日(水)
公式サイト:https://niaff.net
公式 X(旧 Twitter) :@NIAFF_animation