映画作りとは物語を一緒に感じること
Q:体の側面を紐で結ぶ手術着のようなものなど、兵士が着る軍服の中には初めて見るようなデザインがありました。全て実際にある軍服で撮影されたのでしょうか?
ドゥニ:あれは全て本物の軍服です。汗をかいたときにベタつかないように、袖なしのベストみたいにして、側面を開いて風通しが良くなるようにデザインされたものです。実際に使われているものですね。
兵士たちがシャツにアイロンがけをするシーンがありますが、あれも実際に自分たちで1着1着、丁寧にアイロンがけしてもらいました。兵士たちはきちんと折り目がついたシャツでないと外出できません。彼らにはその訓練もしてもらいました。
『美しき仕事 4Kレストア版』© LA SEPT ARTE – TANAIS COM – SM FILMS – 1998
Q:そういった兵士たちの日常が粛々と描かれますが、撮影当時はどのように演出されたのでしょうか。
ドゥニ:役者たちと映画作りを一緒にやること自体が演出でした。映画作りとは物語を一緒に感じることだと最初に伝えたんです。そして脚本をよく読んでもらいました。その後、実際に外人部隊の兵士だった方を交えて、役者に軍隊のトレーニングを2ヶ月間やってもらいました。予算が少なかったので場所はパリの体育館でしたね。たった15人でしたが、一つの部隊がそこには出来ていました。
Q:兵士たちの中でもドニ・ラヴァンは佇まいからダンスシーンまで、その存在感が際立っていました。
ドゥニ:実は私にとって強い存在だった人は、ドニではなく彼の上官役にあたるミシェル・シュポールでした。ゴダールの『小さな兵隊』(63)に出ていた役者さんですね。とても力強く演じてくれて、彼が上にいてくれたからこそ成立した部分もありました。ミシェル・シュポールは映画にとって一つの光のような存在で、皆撮影中は彼のことを「司令官!」と呼んでいましたよ。