現場だからこそ生まれるものがある
Q:杉咲花さん演じる森口泉は、友人の死という大きな葛藤を抱えながらも、直接的にはそれを表には出さない難しい役柄だったと思います。演出するにあたり杉咲さんとはどんなことを話されましたか。
原:沸々とした気持ちがありつつも、それを表面に出さないというのはすごく難しいですよね。杉咲さん自身からも、「あまり感情を見せなくていいのではないか」という提案がありました。僕からは「こう演じてほしい」とは特に言っていません。本読みもあまり好きじゃないので、本読みもしませんでしたね。
Q:監督も役者さんも、事前に本読みをしたい方と、現場でいきなりやりたい方で、考え方が分かれるみたいですね。
原:僕は本読みがダメなんですよね。ただの確認作業になっちゃうんです。現場でやるからこそ思ってもいないことが生まれたりする。そこが良さだと思っています。結局現場では何度も撮りますしね(笑)。でもそれは待っている部分があるんです。芝居のアプローチがどう変わるのか、言って良くなることもあれば言わなくて良くなることもある。いつもそれを待っていますね。
『朽ちないサクラ』©2024 映画「朽ちないサクラ」製作委員会
Q:安田顕さん演じる富樫と豊原功補さん演じる梶山の抑制の効いたコントラストが非常に見応えがありました。2人の存在は作品にリアリティと説得力を与えていたと思いますが、どのような演出をされましたか。
原:安田さんは脚本をすごく読み込まれてくる方でした。「こう思うんですけど、監督どうですか?」とちゃんと聞いてくださるので、それに対して僕の考えは伝えつつも、基本的には安田さんの意見を生かそうと思っていました。ディスカッションを重ねながらも「伸び伸びやってください」とお願いしました。安田さんは芝居にブレがなくて自分の芯をしっかり持っている方ですが、僕がリクエストするとそれに合わせて全然芝居を変えてくる。すごく頼りになりました。
豊原さんには、ほぼ何も言っていません(笑)。豊原さんからも「監督!なんでも言ってね!」と毎回言われましたが、「そのままで大丈夫です!」といつも返していました。本当にイメージにピッタリだったんです。物語の裏では梶山の視点で話が動いていくこともあり、豊原さんはこの役をすごく楽しんでやってくれていました。最初は見た目が怖いなと思っていたのですが(笑)、すごく気さくで優しい方でしたね。