子供たちとの出会い
Q:子供たちとはどのように出会い、どんなきっかけでコミュニケーションを深めていったのでしょうか。
塚田:オーディションはやりたくなかったんです。出演したいと思っている子たちを私が選ぶ、ということがどうしても嫌でした。だったら子供たちに会って私がいいなと思った子をナンパして、出演するかどうかはその子に決めてもらった方が、自分としても納得できるなと。それで子供たちを集める場所を作ろうと考えたのが、映像のワークショップでした。今はYouTubeやTikTokもあるので映像好きな子は多い。無料だし来てくれる子はいるだろうなと。新聞で告知・募集してワークショップを開催しました。
そこに来てくれた子供たちと仲良くなって、その子たちの友達や学校の知り合いともつながり、ネットワークをどんどん広げていきました。満月も秋ちゃんもワークショプがきっかけで出会った子たちです。知り合ってからは、電話したりメールしたりご飯に行ったり遊びに行ったりと、普通の友達みたいに仲良くなっていきました。
『満月、世界』
Q:出演を依頼した際、満月さんと秋さんの反応はいかがでしたか。
塚田:満月は「あ、いいよ、やるー」みたいな感じだったのですが(笑)、秋ちゃんは「え?え?」となってました。秋ちゃんは『満月』の方にも出てくれているのですが、その時点でも最初は「え⁉︎ 無理!」みたいな感じでした。それでも「とりあえず遊びに来てよ」と言って現場に来てもらい、結局撮影することになりました。
その撮影中、秋ちゃんが現場でセリフを言えなくて泣いてしまいました。これは何かを抱えているなと感じましたが、そのときは吃音だとは思いませんでした。泣いている秋ちゃんの横にずっと寄り添っていると、しばらくして泣き止み「やる!」と言ってくれた。その後『世界』を撮るときに出演をお願いしたら、そのときはすぐに「やる」と言ってくれました。『満月』があったから、秋ちゃんは、「やる」と言ってくれたのだと思います。
ただ、秋ちゃんに本人役をやらせることは、あまりにも過酷じゃないかと思っていました。それで『世界』に関しては、最初は別の子で考えていました。秋ちゃんにもそれは話していて、秋ちゃんにやって欲しいとは言わなかった。でもやっぱり秋ちゃんをやる上では、秋ちゃんが一番力を持っているし、他の子よりも絶対に説得力のある顔をするなと。秋ちゃんにやって欲しくて、「秋ちゃんに、秋ちゃん(役)をやってもらいたいんだけど」と伝えたら、「私もそれがいいと思っていた」と(笑)。
秋ちゃんに出てもらうことは秋ちゃんに対しての暴力になるだろうと思っていたし、満月をはじめ他の子供たちに対しても、出演してもらうことが暴力になるかもしれない。常々そう思っています。撮影中に、もう無理だと本人たちのシャッターが降りちゃったら、それで終わりだと思っているので、今も続いている『刻』の撮影でも、もしかしたら降りちゃう子が出てくるかもしれない。でもあの子たちの素の姿が一番破壊力があり、すごい力を持っている。それを撮りたいといつも思っていますね。