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『満月、世界』塚⽥万理奈監督 演技未経験の子供が本人役を演じる意義とは【Director’s Interview Vol.435】

『満月、世界』塚⽥万理奈監督 演技未経験の子供が本人役を演じる意義とは【Director’s Interview Vol.435】

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16mmフィルムで10年かけて子供たちを撮影するプロジェクト、映画『刻』。その制作過程から生まれたオムニバス映画が、本作『満月、世界』だ。出演するのは演技未経験の長野に住む子供たち。その表情や佇まいは情感にあふれ、そこに“素人”という言葉は存在しない。ドキュメンタリーのようなフィクションではあるのだが、カテゴライズを受け付けない独自の世界観を生み出すことに成功している。塚田監督はいかにして本作を作り上げたのか。話を伺った。



『満月、世界』あらすじ

満月:小説を書いたり音楽に没頭したり、自分の世界を持っていながら、過ぎていく日常の中で、懸命に感性を働かせて生きている中学生、満月 (ミツキ)の物語。


世界:吃音があり作文発表では上手く朗読できないが、世界地図を読んだり洋楽を聴くのが好きな中学生、秋と、やりたくて始めたはずの音楽に焦りを感じている歌手、ゆうみの物語。


Index


演技未経験の子供が本人役を演じる



Q:『満月、世界』は10年かけて撮る映画『刻』から派生して生まれた作品とのことですが、『刻』は本作を内包しているのでしょうか。


塚田:『満月』は『刻』を撮る前、『世界』は『刻』を撮っている最中に、それぞれ子供たちと出会い、作った話です。『満月』は資金集めの一環でパイロット版として作ったものですが、『刻』との関連性はありません。


Q:なぜ『刻』とは別に『満月、世界』を撮ろうと思ったのでしょうか。


塚田:『刻』は私が書いた脚本をもとに、子供たちに役を演じてもらっています。現場で彼女(子供)たちと話していると、彼女たち自身の話がすごく魅力的でした。彼女たち自身のことも是非撮ってみたいなと。それで、『満月』は満月自身のことを、『世界』は秋自身のことを、本人たちの話から脚本を起こし、本人に演じてもらう形にしました。



『満月、世界』


Q:脚本は具体的にどのように作られたのでしょうか。


塚田:『満月』の場合は、まず満月にICレコーダーを渡し、1ヶ月ほど彼女の日常の音、環境音をひたすら録ってもらいました。満月の日常会話や風景の音など、合計で100時間くらいの音声素材があったのですが、それを聞きながら脚本を書いていきました。


『世界』の方は、秋ちゃんから「自分のことを書いた作文を読んでほしい」と言われたのがきっかけです。秋ちゃんは吃音を抱えているのですが、それに対する悔しさや、理解して欲しい気持ちなどが作文に書かれていました。すごく良い作文になっていて、それを元に秋ちゃんと相談して詰めたものが『世界』の脚本になりました。


Q:主演二人の演技がとても自然で驚きます。演技経験のない子たちを、どのように演出されたのでしょうか。


塚田:そもそも本人たちの話を元に書いているので、そのセリフを満月が言うか言わないか、秋ちゃんが言うか言わないかは、脚本を書いている時点で本人たちに相談していました。現場でも「満月だったらこのとき何と言う?」「秋ちゃんだったらこのとき何と言う?」と聞き、本人たちが出来ないことは撮りませんでした。彼女たちが出来るところを探していった感じです。


Q:本人たちが佇んでいたり、何かを考えているような表情がしっかり捉えられていますが、それらはどのように撮影されたのでしょうか。


塚田:そういった表情を撮りたい時は、話し合って“お題”のようなものを与えていました。「こういうときはどんなことを考える?」「それって、秋ちゃんにとってどういうこと?」みたいな質問をして、それを考えているときの表情を撮っていました。


Q:『刻』もそのアプローチで撮っているのでしょうか。


塚田:そうですね。子供たちとはずっと同じコミュニケーションをとりながら撮っています。





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