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『満月、世界』塚⽥万理奈監督 演技未経験の子供が本人役を演じる意義とは【Director’s Interview Vol.435】

『満月、世界』塚⽥万理奈監督 演技未経験の子供が本人役を演じる意義とは【Director’s Interview Vol.435】

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いかに本物に見えるか



Q:16ミリフィルムでの撮影は本作のこだわりの一つですが、実際に撮影してみていかがですか。


塚田:やっぱり良いですね。フィルムの概念が好きで、“いきもの”に“いきもの”を託しているような感覚があります。10年後も変わらず、今のあの子たちを覚えてくれているような感じもあり、すごく安心します。また、フィルムの場合はデジタルよりも光作りが重要な気がしていて、デジタルで撮った『世界』のときよりも、フィルムで撮った『満月』や『刻』の方が太陽を待っていた記憶があります。自然と一緒に映画が記録されていく感じがして、すごく気持ちがいいですね。


Q:どこまでが作られた世界で、どこまでが本当の世界なのか観ていて区別がつきません。美術などは仕込まれているのでしょうか。


塚田:外での撮影はそのままを撮っていますが、部屋や家の中などは作り込んでいます。衣装もちゃんと決めて撮影していますね。


Q:ありのままを捉えている感覚がある一方で、ドキュメンタリーとも違っている。意図しているものはあるのでしょうか。


塚田:これまでずっと、いかに本物に見えるかが映画におけるテーマだった気がします。多くの監督がそうかもしれませんが、脚本を考えたり、演技指導をしたり、美術を作ったりと、いかに嘘っぽくないようにするか。本物に見えれば見えるほど感情をつかめるところがあるんです。



『満月、世界』


Q:今後は『刻』の制作に専念されるのでしょうか。今回のように派生する作品や別作品を作る予定はありますか。


塚田:私は、撮りたいものが撮りたい人なので、撮りたいものが出てこなければ『刻』だけを撮っていると思います。ただ、こうして子供たちと関わっていると、また他の子の話を撮りたくなるかもしれません(笑)。


Q:どういう映画や監督に影響を受けたのか、映画との出会いやきっかけを教えてください。


塚田:私は映画館が好きだったんです。暗くて光が灯っていて、ホッとする感じが好きでした。そんな理由で映画館に通っていたので、映画自体が好きだった記憶はあまりないのですが、それでも観る量が増えてくると、映画のことを誰かと話したくなってくる。周囲に映画好きな友達がいなかったので、その友達が欲しくて、映画の学校である日芸(日本大学芸術学部)に入りました。そこで映画作りを勉強したので映画の作り方を覚えたのですが、映画が作りたくて通っていた覚えもなく…、私はずっとそんな感じなんです。ですが、何か“言いたいこと”は昔からたくさんありました。自分の言いたいことは映画でなら主張できる。それで映画を作るようになったのだと思います。


好きな作品はいっぱいありますが、衝撃を受けたのはガス・ヴァン・サントの『エレファント』(03)ですね。普通の日常があり、普通の子たちがいる中で、ああいう感情が起きてしまう。犯罪者って実は犯罪者じゃないのかもしれないという感じがして、それがすごく怖かった。また、同じシーンを違う場所から撮って何度も繰り返すところなど、映画技術の面白さを見せられた気がしました。本物を撮っているわけではないのに、本物っぽい感じも素晴らしく、映画として、エンタメとして、とても面白く作られているところに驚きました。『エレファント』はすごい出会いでしたね。



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監督/脚本:塚⽥万理奈

1991年⻑野市出⾝。⽇本⼤学芸術学部映画学科監督コース卒業。卒業制作『還るばしょ』が、第36回ぴあフィルムフェスティバル⼊選、第8回⽥辺・弁慶映画祭⽂化通信社賞受賞、第12回うえだ城下町映画 祭⾃主制作映画コンテスト審査委員賞受賞、第9回福井映画祭⼊選。初の⻑編映画となった『空(カラ)の 味』が第10回⽥辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ・⼥優賞・市⺠賞・映検審査員賞と史上初の4冠に輝き、東京テアトル新宿、⻑野相⽣座・ロキシー始め、全国公開を果たす。現在、16mmフィルムで10年かけて撮影する映画『刻』を制作中。 



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『満月、世界』

9月21日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

配給:Foggy 配給協力:アークエンタテインメント

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