初めて体験するオリジナル三部作
繰り返しになるが、オリジナル三部作をスクリーンで観るのは初めてだった。1997年当時5歳だったぼくは『特別篇』を劇場で観る機会に恵まれず、映画館で観たのは2002年の『 エピソード2/クローンの攻撃』が最初だった。ぼくがその物語についてある程度の理解を持つ頃には、プリクエル三部作による後付けが進み、オリジナル三部作自体にも一定の解釈が定着していた。
せっかくスクリーンで三部作を続けて観るなら、後年の解釈はひとまず忘れて、できるだけフラットな気持ちで観たい。しかしそんな構え方をせずとも、大きな画面と生演奏の迫力ある音楽とでそこには全く新しいオリジナル三部作があった。
音楽を取り除かれた本編映像は代わりに残りの音や声が大きく際立ち、今まで注意もしなかったような音が無数に聞こえることに気づく。足音、レーザー音、機械の音、衣擦れ、セリフのトーン。特にセリフは大画面で映し出される人物の表情の動きも相まって非常に新鮮に、味わい深く感じられた。画面内の背景や細かい動きもよく見え、自宅で観るそれとはまるで違う。
新鮮な感覚は物語にも展望をもたらす。EP4は言うまでもなく原点かつ至高で、今や中心となる物語だ。お姫様、魔法使い、ロボット、海賊、宇宙船、クリーチャー、悪党、楽しいものや必要なものがこれでもかと詰め込まれ、ミステリアスな雰囲気が漂うおとぎ話。続くEP5は、そういったファンタジーな世界観ががらりと変わり、画面は冷たく、物語はドラマチックに展開、少し大人びたロマンスや暗さもあって、しまいには悪が勝利して終わる。最後のEP6は、前作の少し外した展開から、再び最初のファンタジー世界への立ち返り、新しいデス・スターも登場してEP4のアップグレード版のような形となる。
『希望』が生まれ、『逆襲』され、『帰還』する。タイトルが表す通りの展開で三部作は綺麗に完結する。そのサーガを語り彩る音楽もまた作品ごとの表情に合わせて変化、展開していることがわかる。
EP6のエンドクレジットが終わり、スクリーンに巨大な「STAR WARS」のロゴがバンと映し出された途端、1日でいちばん大きな拍手が鳴り響いた。座ってなどいられない。瞬く間に総立ちである。それはこの特別な形で上映されたオリジナル三部作への想いの爆発であると同時に、指揮と演奏への賞賛と感謝そのものだったと思う。
何度も観ていて、何度も聴いているはずの『スター・ウォーズ』。しかしスクリーンと生演奏による一挙上映はとても新鮮で、初めての映画体験、初めてのオリジナル三部作だった。自分はまだまだ『スター・ウォーズ』のことをなにも知らないんだなあとさえ思えるが、それはこれからもこの作品をいろいろな形で楽しめるということ。映画体験が無限大なら、『スター・ウォーズ』の世界も無限大であるということを、今回のコンサートは教えてくれた。
スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018 公式サイト
イラスト・文:川原瑞丸
1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。