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目の前で奏でられる遠い銀河の交響曲
7月29日、東京オペラシティで「スター・ウォーズ in コンサート Japan Tour 2018」が開催された。『 エピソード4/新たなる希望』(1977年、以下EP4)、『 エピソード5/帝国の逆襲』(1980年、以下EP5)、『 エピソード6/ジェダイの帰還』(1983年、以下EP6)からなるオリジナル三部作を、オーケストラの生演奏に合わせて一挙上映するシネマ・コンサートである。映画系コンサートでもおなじみのオーストラリア人作曲家ニコラス・バックの指揮のもと、東京フィルハーモニー交響楽団が、映画史に残るジョン・ウィリアムズの伝説的スコアを映像と完全に一致させて演奏した。
午前11時のEP4上映開始の際には、ダース・べイダーがストームトルーパーの一隊を引き連れて会場に現れ、オープニングを演出。間も無く20世紀フォックスのファンファーレが鳴り響き、客席はどっと湧く。
オリジナル三部作をスクリーンで鑑賞する機会さえ特別なのに、その音楽が生演奏というのは大変贅沢。大好きな映画で、映像も音楽も肌に染み付いているくらいだと自分では思っていたけれど、初めてスクリーンで観るオリジナル三部作には新たに気づく点も多く、普通にソフトで鑑賞したときとはまるで違った。ここでこんな楽器が鳴っていたんだと、生演奏でなければわからない音のディティールが伝わってきて驚いた。劇中で流れる音楽とサウンドトラック収録曲には若干の違いもあるので、こういった機会でないと聴けないものも少なくなかったのではないかと思う。
『スター・ウォーズ』はその音楽自体が物語を語っているのも特徴的だ。サウンドトラックを最初から最後まで聴くと、シーンやキャラクターと結びついた一曲一曲から映像が思い浮かび、まるで映画を一本観たかのような余韻を感じられる。
そもそもスティーブン・スピルバーグからジョン・ウィリアムズを紹介される前、ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』にベートーヴェンやチャイコフスキーといった既存の交響曲を使おうとしていたのだが、ウィリアムズはルーカスのそのアイデアを元に技巧を凝らした挑戦的なスコアを仕上げる。作品の代名詞とも言うべきテーマのあちこちに、ホルストやワグナーのような雰囲気があるのもそのためだろう(特にEP4は「火星」の影響が強いようにぼくは思う)。
壮麗な交響曲で語られる銀河の物語はまさにスペースオペラと呼ぶにふさわしく、映像と音楽はまるでフォースで結びつけられたかのように切っても切れない関係だ。その意味でも『スター・ウォーズ』とシネマ・コンサートの親和性はとても高かった。