中学生のリアルを映し出したドキュメンタリー映画『14歳の栞』(21)。この映画の素晴らしかったところは、その内容はもちろん、出演者への徹底した配慮だった。配信やパッケージ化をせずに映画館のみで上映、出演している個人への誹謗中傷やプライバシーの詮索、SNSへの書込みなどをしないよう観客全員に注意書きを配布するなど、この映画を作ったスタッフの真摯な姿勢と強い意志を感じた。そんな制作チームの姿勢に感銘を受けたのが、俳優でありフィルムメイカーでもある齊藤工だ。齊藤が彼らに相談したのが、児童養護施設に密着するという本作『大きな家』の企画だった。
完成した映画『大きな家』について言えることはただ一つ、老若男女問わず全ての人に観てほしいということ。そこには今この世界に生きる私たち全員が見るべき内容が映っていた。
『14歳の栞』を手がけた竹林亮監督はいかにして『大きな家』を作り上げたのか。話を伺った。
今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!
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全人類に観てほしい
Q:『14歳の栞』とは似て非なる作品が出来ました。完成した映画を観ていかがですか。
竹林:撮影中は子供たちとの仲も深まり彼らのことがすごく好きになりました。この映画は、そんな子供たち自身に見てもらいたくて撮影していたところもあるんです。本人たちが施設を出た後に、この映画が彼らの心の支えになればいいなと。ただ同時に、映画は観客にお見せするものでもある。そこはどうなんだという気持ちもありました。でも完成した今は、全人類に観てほしい映画になりましたね。
『大きな家』©CHOCOLATE
Q:児童養護施設の子供たちを撮るという、今回の企画を聞いた時はどんな印象がありましたか。
竹林:齊藤工さんとは以前ドキュメンタリーを3年くらい一緒に撮っていて、そのときの齊藤さんのスタンスを尊敬していました。『14歳の栞』を観た齊藤さんに声を掛けていただいたのもご縁なので、これは何か形にしたいなと。でも、ドキュメンタリー映画はすごく時間もかかるし、覚悟が必要。恥ずかしながら児童養護施設や社会的養護についての知識もなかったので、そこを調べる過程も必要でした。それで齊藤さんと一緒に児童養護施設の子どもたちに実際に会いに行き、そこで子供たちや彼らと向き合っている職員の皆さんの日常を見せてもらうと、ぜひ撮影させてほしいと思いました。すぐにそういう気持ちになるようなグッとさせられるものがあったんです。子供たちとも直接話しましたが、皆それぞれすごく気になるような魅力を持っているんです。