『バグダッド・カフェ 4Kレストア』パーシー・アドロン監督　デジタル・テクノロジーに無限の感謝を抱いている【Director’s Interview Vol.458】

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2024.12.09CINEMORE編集部

デジタル・テクノロジーに無限の感謝を抱いている

Q：4K修復にあたって思うところはありましたか？

アドロン：ドイツ映画を支えてくれてるFFA＝連邦映画事務局は32年前に『バグダッド・カフェ』の製作も支援してくれたんだけど、彼らは２年前に"Filmerbe"という過去の映画遺産を修復・保存するプロジェクトを始め『バグダッド・カフェ』を含む僕らの撮った５作品を4K修復するのを手伝ってくれた。映画作家として長年、自分や仲間たちが作った映画が褪色したり傷んだプリントで上映されることに心を痛めてきたんだ。それでは作り手の意図が伝わらないからね。だから僕は世界中の映画館の観客たちが、DCP（デジタル・シネマ・パッケージ）と呼ばれる小さな箱の助けを借りて映画を観られるという、このデジタル・テクノロジーに無限の感謝を抱いている。これはとてつもなく素晴らしいことだよ。

Q：前回の＜ニュー・ディレクターズ・カット版＞は画面の縦横比が1:1.78だったの対し、今回の＜4K修復版＞は1:1.66になっていますね。

アドロン：70年代、80年代のヨーロッパのほとんどの映画は1:1.66の比率で撮影されていたからね。前回のはHDのモニターをきっちり埋め尽くすようにと1.78を選択したんだ。

Q：＜4K修復版＞で、光や色がより美しくなったと感じます。

アドロン：うん、4Kだと光も色もより美しい…プロフェッショナルがきちんと調整を行えばね。4K版については、より強いものになるように色の設計を工夫した。

Q：『バグダッド・カフェ』は世界中で人気ですが、特に日本のファンは熱狂的にこの映画を愛していると感じます。

アドロン：『バグダッド・カフェ』は世界中で大変な成功を収めた。でも、もっとも真摯なファンは日本人だ。なぜか？　日本のファンはオリジナルなアイデアや、明確で説得力のあるスタイル、純粋にアーティスティックな仕事だけが生み出す簡潔さ、そして人を笑わせるようなストーリーに対して、感受性が強いからじゃないかな。2018年カンヌ映画祭の＜カンヌ・クラシック＞に招かれて、ビーチに設置された美しくも巨大な野外スクリーンで上映された時、多くの人が僕と妻のエレオノーレのところに来て「『バグダッド・カフェ』は歳を取らないね」と言ってくれた。いろんな色やバックグラウンドや信念を持つ人々同士の相互理解を慈しむような温かいストーリーというものは、我々の時代にとっての癒しだと感じている。

※2019年1月、電子メールにてインタビュー。『バグダッド・カフェ』4K修復版Blu-ray（発売元：WOWOWプラス＝2024年現在廃盤）ブックレットより抜粋。

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監督／脚本：パーシー・アドロン

1935年6月、ドイツ・ミュンヘン生まれ。ミュンヘン・ルートヴィヒ=マクシミリアン大学で美術、演劇、ドイツ文学を学んだ。舞台俳優として3年間活動した後、ラジオの文学番組のナレーターや編集者、テレビのナレーション俳優として活躍。1970年、バイエルンのテレビ局で初の短編映画を撮り、以降150本以上のドキュメンタリーを制作。1981年、初の長編映画『CÉLESTE』劇場用映画に進出。その後も多くの作品を発表している。日本公開された作品に、マリアンネ・ゼーゲプレビト出演の『シュガー・ベイビー』（‘85）、本作『バグダッド・カフェ』（’87）、『ロザリー・ゴーズ・ショッピング』(’88)、k.d.ラングの映画初出演作『サーモンベリー』（‘91）、ブレンダン・フレイザー主演の『グローリーデイズ／夢見る頃はいつも』（’93/劇場未公開・ビデオ発売）、『マーラー　君に捧げるアダージョ』（‘10/共同監督：フェリックス・アドロン）などがある。2024年3月没。

構成：CINEMORE編集部