© 1987 / Pelemele Film GmbH - Pro-ject Filmproduktion im Filmverlag der Autoren GmbH & Co. Produktions-Kommanditgesellschaft München - Bayrischer Rundfunk/BR - hr Hessischer Rundfunk
『バグダッド・カフェ 4Kレストア』パーシー・アドロン監督 デジタル・テクノロジーに無限の感謝を抱いている【Director’s Interview Vol.458】
1989年日本公開。ミニシアターブームの象徴となった珠玉の名作『バグダッド・カフェ』が、パーシー・アドロン監督監修のもと4K修復され、日本のスクリーンに戻ってくる。
今回のインタビューは、2019年1月に電子メールにて実施され『バグダッド・カフェ』4K修復版Blu-ray(発売元:WOWOWプラス=2024年現在廃盤)ブックレットに掲載されたものを抜粋・再構成。製作当時のことから4K版についてまで、生前*のパーシー・アドロン監督自ら語ってくれている貴重なインタビュー。ぜひお楽しみください。
*:パーシー・アドロン監督は2024年3月に逝去。
『バグダッド・カフェ』あらすじ
アメリカ西部、モハヴェ砂漠にたたずむ寂れたモーテル「バグダッド・カフェ」に現れたのは、場違いな風貌のドイツ人旅行者ヤスミン。オーナーのブレンダは家庭も仕事もうまくいかずいつも不機嫌。持ち物は全て男物、勝手に掃除を始め店を手伝おうとする得体の知れぬ訪問者ヤスミンに対して怪訝な態度をみせるが、朗らかなヤスミンは周囲の人々を巻き込み、店は活気付いていく。次第にブレンとヤスミンの心は近づいていき、かけがえのない友情で結ばれていく……カフェに集うのは、近くのトレーラーハウスに住む老画家ルディ、アンニュイなタトゥーイストのデビー、モーテルの隣にテントを張って住み着いているエリックなど個性的な面々。訪れるのも立ち去るのも自由、誰をも受け入れる場所、それが「バグダッド・カフェ」。
Index
黄色の理由
Q:この映画を作る最初のきっかけは?
アドロン:カリフォルニアのモハヴェ砂漠への旅行中、僕らは中空に初期の太陽光発電センターが生み出す2つの光の束を見た。自分の子どもたちと旅をしていたんだ。ドライヴ・インやカフェに立ち寄る度にストーリーを発展させた。その光の下にいる『シュガーベイビー』(85)のマリアンネ・ゼーゲブレヒトと『カラーパープル』(85)のウーピー・ゴールドバーグのお話。最初、彼女たちはお互いを変な動物みたいに思っているんだけど、中空の光が彼らの心の温もりを引き出し、二人は友だちになる。
僕らが脚本を書き始めた時は、ロマンスに対する強い想いと、その次の映画のためになんとかお金を稼がなくちゃという衝動があった。脚本を書くのに4週間はかからず、キャラクターも全部出来ていた。多分、僕らもそれなりの人生経験を積んでいたから、こうしたストーリーを生み出すのにちょうどいい年齢だったんだろうと思う。でも、ピッタリな俳優、撮影監督、デザイナーを見つけられたことが、この映画にとっても、僕らのキャリアにとっても、そして世界中の観客にとっても、最大の贈り物だったね。
『バグダッド・カフェ 4Kレストア』© 1987 / Pelemele Film GmbH - Pro-ject Filmproduktion im Filmverlag der Autoren GmbH & Co. Produktions-Kommanditgesellschaft München - Bayrischer Rundfunk/BR - hr Hessischer Rundfunk
Q:なぜヤスミンと彼女の夫は、他のドイツのどの都市でもなく、ローゼンハイムから来たのでしょう? あの魔法瓶のステッカーはローゼンハイムのものですか? 魔法瓶と外の給水塔が同じ黄色なのは意図的なものですか?
アドロン:ほとんどのドイツ人は「ローゼンハイム」という地名を、ザルツブルグに向かう道路の標識の上でしか知らないんだ。ヤスミンはバイエルン地方の何の変哲もない町から来た。彼女はバイエルン人で、ドイツ語とバイエルン訛りの英語を話す。この映画のドイツ版のタイトルは"Out of Rosenheim”(ローゼンハイムを離れて)だった。それは1986年に7部門ものオスカーを受賞した"Out of Africa”(愛と哀しみの果て)に引っかけたジョークだったんだ。あの魔法瓶のステッカーは本当にローゼンハイムで買ったものだ。黄色い魔法瓶はカリフォルニアで買った。黄色という色はこの映画を通じて「温かさ」を表している。