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『わかっていても the shapes of love』中川龍太郎監督 大人の鑑賞に堪えるラブストーリーを【Director’s Interview Vol.460】

『わかっていても the shapes of love』中川龍太郎監督 大人の鑑賞に堪えるラブストーリーを【Director’s Interview Vol.460】

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一人につき一作家、美術作品へのこだわり



Q:美術大学が舞台ゆえ、絵画や彫刻など美術品が多数出てきますが、その具現化はどのように進めたのでしょうか。


中川:今回こだわった点は、美大の学生など主な登場人物に関して1人につき1人の作家についてもらったことです。つまり、各キャラクターが作っている芸術作品は、それぞれについてもらった実際の作家の作品になっています。役者さんとしても「自分が演じる役はこういうものを作っているんだ」というものがないと、何だか張りぼてみたいになってしまうのではないでしょうか。


それはラブストーリーであることにも関係していて、「私はこういった作品を作っているから、こういう人に惹かれている」ということに絶対的に繋がっているはずなんです。そこは僕も作品を作っているからこそ実感がある。役者にはそれを大事にしてもらいたかったので、1人につき1人の作家についてもらいました。作家の方々からはそれぞれの作品をお借りしましたが、人によっては今回のドラマのために、わざわざ一から作ってもらった作品もあります。


Q:美術作品に対する優先順位の高さ(こだわり)は、制作サイドにも共有できていたのでしょうか。


中川:まずはプロデューサーと話し、そこから現場に僕の意志を伝えていきました。今回演出部にいた武中志門くんというスタッフが彫刻担当として動いてくれたのですが、すごく頑張ってくれましたし、彫刻監修の井原宏蕗さんにも多大な協力をいただきました。そこを大切にしていこうという意識は全スタッフが持っていたと思います。これだけの大きな作品で、全スタッフと意識を統一することはすごく難しい。素晴らしいスタッフの方々に恵まれていたと思います。


Q:バジェットや内容の踏み込み方など、配信ドラマの方が映画よりも制作環境が良い印象がありますが、実際のところはいかがでしたか。


中川:こういうこともお金を掛けると出来るんだと、色々勉強になりました。お金の掛け方もセンスなんだなと。次に生かせる経験が出来たと思います。今回は提案していただいた企画でしたが、相当に自由を与えてもらえた気もしています。話し合いを丁寧に同じ目線に立ってしていただけるといいますか。その点において、プロデューサーの全員に感謝しています。キャスティングに関しても、これまで自分の作品に出てくださった役者さんにもお願いすることができて、とてもやりやすかった。そういった環境を作ってくださったことは本当にありがたかったです。



ABEMAオリジナルドラマ『わかっていても the shapes of love』© AbemaTV, Inc. All Rights Reserved


Q:映画や配信ドラマなど第一線で活躍されている印象がありますが、今後はどのような作品を作っていきたいですか。


中川:ちょうど新しい映画の撮影が一昨日終わったのですが、それはオリジナル脚本で、これまでの自分の集大成のような作品でした。映画とドラマ、オリジナルと原作モノは、どちらかに偏るのではなく、振り子のように行ったり来たりするものではないかと。オリジナルの映画を作ることはライフワークとして続いていくと思いますが、自分の中ではまだ可能性を閉ざす時期ではないですし、今回のような取り組みは今後もお話しをいただけるのであれば、是非やっていきたいです。


Q:原作モノをやることに面白さは見出せましたか。


中川:もちろんありました。自己の世界だけを追求していても、本当に深いところまでには行けない気もしていたので。自分というものは、自分が世界をどう見るかに反映されると思います。題材を与えられて、そこに自分がなにを見出すのかというところに個性が出てくる。こういう機会じゃないと出来ないこともあるわけです。また、この作品をやらせていただいたからこそ、この枠の中では表現できないことに気づくことも出来ました。それによって、次のオリジナル作品の濃度をより高めることも出来たと思っています。






監督/脚本:中川龍太郎

『四月の永い夢』(2017)がモスクワ国際映画祭にて、国際映画批評家連盟賞・ロシア映画批評家連盟特別表彰を受賞。『わたしは光をにぎっている』(2019)がモスクワ国際映画祭に特別招待。『静かな雨』(2020)が東京フィルメックスにて観客賞。愛知県観光動画『風になって、遊ぼう。〜ジブリパークのある愛知〜』を制作。その他、『やがて海へと届く』(2022)、『MY (K)NIGHT』(2023)など



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





ABEMAオリジナルドラマ『わかっていても the shapes of love』

12月9日(月)夜9時~配信中(全8話)

配信:ABEMA、Netflix

© AbemaTV, Inc. All Rights Reserved

番組URL:https://abe.ma/48sIFYo

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