役者のアウトプットを優先する
Q：豪華キャストが魅力的ですが、キャスティングはいつも監督が希望を出されるのでしょうか。
福田：プロデューサーから「福田監督の作品は役者を選ぶ」とよく言われるのですが、やっぱり僕のテイストはありますよね。そこの共通言語を踏まえて役者さんに来てもらい、僕が細かい指示をすることなく役者さんに遊んでもらうのがベストなんです。だから今までご一緒したことがあったり、僕の作品を好きだと言ってくださる役者さんにお願いすることが多いです。今回は初めての方もいらっしゃいますが、ほとんどの方が一度お手合わせしているので、ほっといても面白くやってくれる役者さんが勢ぞろいした感じです。
Q：役者の皆さんは、福田作品のトーンは大体ご存知だとは思いますが、そのトーンを知らない役者さんに説明されることなどはあるのでしょうか。
福田：それがですね、あまり体験したことがないんですよ。「この人ちょっとわかってないな」っていうことがあまりない。最初に段取りをやって、次にカメリハ、そして本番という流れで言うと、多くの監督が「こうしてください」と段取りの前に伝えると思うのですが、僕は役者さんが考えたものを一度見せてもらうんです。もちろん脚本を書いているときには、どんな感じでどんな言い方をするキャラクターかは、自分の頭の中で全部出来上がっています。でもまずは、それを役者さんに預ける。たとえ「あ、違うな」と思っても、基本的には役者さんが持ってきてくれたものを優先します。段取りを見て、カメリハを見て、それでも自分が思っている方が正しいと思った場合にだけ、初めて役者さんに「こうしてもらえませんか」と言いに行きます。でも、自分の頭一つで考えるよりは、みんなで考えたものが絶対面白いというのが僕のポリシーなので、基本的には役者さんのアウトプットを優先しています。あくまでも役者ファーストですね。
ルシファー役をやってくれた藤原竜也くんは今回初顔合わせでした。ルシファーのセリフにも自分が思い描いた言い方はあったのですが、竜也くんの芝居は僕の想像とは真逆だったんです（笑）。ルシファーは堕天使だから不気味な感じで言うのかなと思ったら、Maxでシャウトするようにセリフを言われた（笑）。「そんな言い方するか⁉︎」と思いましたが、一方で「藤原竜也って面白いなぁ」と思いましたね。自分が想像していたものを1ミリでも超えてくれた役者さんとは、またやりたいという思いがあるので、そういったことはすぐにインプットするんです。「この役者さん、あのときにこんな感じでやってくれたな」と。それが長くお付き合いしている役者さんの特徴ですね。
『聖☆おにいさん THE MOVIE～ホーリーメンVS悪魔軍団～』©中村光／講談社 ©2024 映画「聖☆おにいさん」製作委員会
やっぱり役者さんってすごいなと思いますね。彼らの表現力は僕には絶対真似できない。たまに現場で僕がやって見せたりもするんです。役者さんはそれをすごく面白いと言ってくれるし、スタッフにもめっちゃウケる。でも役者さんがそれを超えてくれたときに、すごい快感があるんです。長いこと一緒にやっているムロ（ツヨシ）くんとか（佐藤）二朗さんは正にそういう感じの役者さんですね。段取りで二朗さんに「こんな感じで」と言うと、二朗さんは必ず「ちょっとやって見せてよ」と言ってくる。それで僕がやるんです。ぶっちゃけ、僕面白いんで（笑）、僕がやってみせるとスタッフがバーっとウケる。そうすると二朗さんが「おい！そんなことやるなよー。お前が一番面白くなるじゃねぇかよ」って言うんです。でも彼は、僕がやったのとは全く別のものを本番で持ってくる。「俺がやったやつと全然違うじゃん！」って。でもやっぱりそれが面白いんですよ。そこが佐藤二朗を手放せない最大の理由ですね。
Q：福田監督の演技を超えることは役者さんにとってかなり大変らしいですね。
福田：松山ケンイチくんにも言われましたね。「監督の通る声、僕ら出ないっす」って（笑）。でも松山くんも染谷将太くんも、僕が考えられないような弾け方をしてくれる。本当に頼りになるキャストですね。
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