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『お引越し 4Kリマスター版』撮影監督/4K監修:栗田豊通 公開から30年、今も続く創造性【CINEMORE ACADEMY Vol.35】

ⓒ1993/2023讀賣テレビ放送株式会社

『お引越し 4Kリマスター版』撮影監督/4K監修:栗田豊通 公開から30年、今も続く創造性【CINEMORE ACADEMY Vol.35】

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海外からの好評価



Q:お祭りのシーンはかなりの人で賑わっていましたが、実際のお祭りの中で撮影されたのでしょうか。


栗田:そうです。これは瀬田(滋賀県)のお祭りで、俳優の周りにいる人たちはエキストラです。助監督と制作部が事前に場所を確保して撮影しました。時間的な問題もありますし、ほとんど一発OKでどんどん撮影していきました。確か3カメで、伊藤昭裕くんと篠田昇くんと僕で撮っていますね。


ロングショットに関しては、向こう岸にライトを並べて当てています。祭りが始まる日中から準備して、照明部にとって大変な作業でした。



『お引越し 4Kリマスター版』ⓒ1993/2023讀賣テレビ放送株式会社


Q:その後レンコは森の中に迷い込んでいき、だんだんと幻想的な雰囲気が漂ってきます。


栗田:そのあたりからは“Day for Night”とナイトシーンを使い分けて撮影しています。レンコは一体どこへ向かっているのか、先ほどのお墓のシーンしかり、彼女は異界に足を踏み込んでいるのではないかと僕は思っていました。


Q:湖で山車が燃えるシーンも圧巻でした。カメラがパンした後にちょうど龍の首が落ちるタイミングも完璧で驚きました。


栗田:あのショットを撮っていた時の感覚は未だに覚えています。あれは本当に不思議なショットで、龍の首に何か仕掛けを施していたわけではなく本当にあのタイミングで落ちたんです。映画の面白さとは、多分そういうところにあるのだと思います。


海外の観客はこのシーンにすごく反応していますが、日本で公開されたときには、あのシーンは余計だと思っている人が多かったそうです。実はあの部分は脚本にはなかったんです。でも相米さんがやりたかったのは、まさにそこだったのではないかと思います。



『お引越し 4Kリマスター版』ⓒ1993/2023讀賣テレビ放送株式会社


Q:過去の作品が4Kリマスターでよみがえり観客の前に再びその姿を表すことは、生みの親としてどんな思いがありますか。 


栗田:このリマスターはヴェネチア国際映画祭で賞をいただいたのですが、選んでくれたのは若い人たちだったそうです。フランスでも劇場公開されて、11館で始まった公開が最終的には138館になったと聞いています。1993年に日本で劇場公開されたときは、こんなことになるとは誰も想像出来なかったでしょう。それが今こうして新しい場所で新しい観客と出会っている。ぜひ日本でも新たな観客と新たな出会いをして欲しいですね。この映画に携われたことはとても幸せでした。



撮影監督/4K監修:栗田豊通

撮影監督・鈴木達夫の助手として修行後、79年に渡米。『トラブル・イン・マインド』(87/アラン・ルドルフ監督)で劇映画・撮影監督としてデビュー、映像の様々な分野と地域を跨いで活動する。『クッキー・フォーチュン』(00/ロバート・アルトマン監督)などのほか、日本では『御法度』(99/大島渚監督)、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07/三池崇史監督)、などで撮影監督を務める。『お引越し』は相米慎二監督との唯一の映画となった。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『お引越し 4Kリマスター版』

12月27日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

配給:ビターズ・エンド

ⓒ1993/2023讀賣テレビ放送株式会社

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