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チャッピーとロボコップ ニール・ブロムカンプのディストピア【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.8】

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ニール・ブロムカンプ監督が『ロボコップ』新作のメガホンを!



 『 第9地区』(2009年)や『 チャッピー』(2015年)のニール・ブロムカンプ監督が、あの『ロボコップ』の新作を撮る予定らしい。前述の2本の代表作はいずれも監督自身の出身地であるヨハネスブルクを舞台にしたSF作品。このたび初めて観たのだけれど、荒廃した近未来のデトロイトを舞台にサイボーグ警官の戦いを描く、かの作品に通じるものが多かった。


 『 第9地区』は、ヨハネスブルク上空に飛来した宇宙船から大勢のエイリアンが現れ、地上で難民として隔離されてから28年が経ったという設定。主人公はエイリアンたちを管理する機関で働く平凡な役人風の男で、異星からの難民たちを今やスラムと化した「第9地区」から新たな「第10地区」へ立ち退かせるため、小屋を一軒ずつまわって書類にサインをもらうという任務(地味なところがまた良い)についたばっかりに、陰謀に巻き込まれてしまう。普通なら恐ろしい侵略者として襲来しそうなエイリアンが、難民として地球人類に虐げられているという独特の世界観を、ドキュメンタリータッチで描く。異様なエイリアンの姿も、生々しいスラムで暮らす様子が妙な説得力を持たせている。


 一方『 チャッピー』は、治安維持のためにロボット警官が投入されたヨハネスブルクが舞台。武装集団との戦いで損傷して廃棄寸前だったロボット警官が、最新の人工知能を与えられて生まれ変わるが、強盗を企むギャング団(ラップユニットのダイ・アントワードのニンジャとヨーランディがそのままの名前と容姿で演じる)によって兵器として奪われ、ギャングスターのように育てられてしまう。こちらもやはりドキュメンタリータッチで物語が始まり、ロボット警官投入の経緯が簡単に説明される。ドキュメンタリーやニュース番組の挿入は、その世界観について手っ取り早く説明できる上、観客を架空の世界に引き込める。そして、その手法は1987年の『ロボコップ』と、続くシリーズにも多用されている。ブラックユーモア溢れるTVCMの挿入などとても好きだ。


 淡々としながらも痛々しい暴力描写や、ハイテクだが不気味さのつきまとうメカの雰囲気も『ロボコップ』らしさを感じるけれど、やっぱり犯罪都市の生々しさや汚れ、生活感みたいなものが印象的だ。そういったディテールがエイリアンやロボット警官といった異形たちに存在感を与え、架空のヨハネスブルクを現実と地続きに見せる。だからこそ強烈さがあって、恐ろしくもある。


 それはもしかすると『 チャッピー』の前年、2014年に公開されたリブート版『ロボコップ』に無かったものかもしれない。スマートかつスタイリッシュな黒いロボコップも、それはそれでひとつの形だったけれど、最初の『ロボコップ』の独特さはあの乱雑と同時に無骨で、金属的な不気味さにあったのだと思う。冷たくて匂い立つようなディストピア、ブロムカンプの描く世界はまさにそれだ。




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