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『フィクティシャス・ポイント』服部正和監督 自分の作りたい映画に正直でありたい【Director’s Interview Vol.490】

『フィクティシャス・ポイント』服部正和監督 自分の作りたい映画に正直でありたい【Director’s Interview Vol.490】

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先人たちの映画に学ぶVFX



Q:橋から落ちたり列車が突っ込んできたりとVFX処理されたシーンもありますが、これらはどのように作られたのでしょうか。


服部:VFXは苦手でして…(苦笑)。子供の時に撮っていた実写映画では、人が落ちる瞬間だけレゴブロックの人形に差し替えていました(笑)。これまでもそれに似たような対応で乗り切ってきたのですが、さすがに今回はちゃんとやろうかなと。撮影した橋は重要文化財なので、撮影交渉に半年くらいかかりましたし、そもそもアクションシークエンスが出来るような場所ではない。人形を落とす案もありましたが、当然許可は降りませんでした。そこで仕方なくデジタル処理の道を模索したのですが、そのノウハウは先人たちの映画の中にありました。人が落ちる場面をこれまでどのように撮ってきたのか、過去の映画をひたすら調べたんです。


そこで今回は、ヒッチコックの『逃走迷路』(42)を参考にしました。クライマックスで自由の女神から男が落ちるショットがあるのですが、撮影では黒い床の上にスツールを置き、そのスツールに俳優を寝かせて落ちるような仕草をさせる。それを俯瞰で撮って後で合成するという方法を採っていました。僕らもそれに倣い、ブルースクリーンを敷いて箱馬*を置き、そこに俳優を寝かせて下から送風機で風を送りました。ただ、それだけだとどうしても浮遊感が出ない。衣装のネクタイが重力に逆らっているように見せるために針金を通したのですが、それでもうまくいかない。最終的にはネクタイにテグスをつけて揺らしながら撮影しました。それを現地で撮った背景に合成したというわけです。


*:撮影や舞台で使われる箱型の台



『フィクティシャス・ポイント』© CIELOSFILM/Cinemago


Q:線路にいる人物に電車が突っ込んでくるシーンも迫力がありました。


服部:そのシーンは『逃亡者』(93)を参考にしています。『逃亡者』で正面から迫ってくる電車は、照明をヘッドライトに見立てた台車を人力で押しているだけだと。それで僕らも同じような方法を採り、川辺に線路を組み立てて、その上に台車を載せて撮影しました。正面のショットはそれで乗りきり、横からのショットは実際の電車を撮影して、そこに人物を合成しました。電車の撮影は場所や時間を調べるのが大変でしたね。





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