動画生成AIが実写映画に近づく日は
Q:世界観を作るにあたっては、「リドリー・スコットの『ブレードランナー』みたいな世界観で」といった指示もできるのでしょうか。
山口:固有名詞は一切入れないようにしました。それは権利や批判に対するリスクヘッジです。今回の3作品は、制作時に固有名詞を使わないことをルールに決めました。リドリー・スコット風にしたい場合は、固有名詞は入れずに違う言葉でアプローチする事で、近い世界観のものを作る事が出来ると思います。Midjourneyなどは、個人名や固有名詞を入れるとエラーが出ることが多いですね。
Q:本作は『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』などに近い、アジアテイストのSFとなっています。AIはアジアテイストの表現が苦手な印象がありますが、その辺はいかがでしたか。
山口:そこの修正は大変でした。去年作った『IMPROVEMENT CYCLE』(24)という6分の短編では、“桜の花が散る”という表現をしたかったのですが、最初は花びらではなく花の蕾が落ちてきました。桜の花自体は理解しても、“花びらを散らす”ことが理解できないんです。また、別のシーンでは侍を出したのですが、“ちょんまげ”を作るのが難しかったですね。“ちょんまげ”をわかってもらえない(笑)。そういった経験を踏まえた上で、今回の舞台は“アジアのどこか”という架空の国にすることで、日本ぽさは出しつつも他のものが混ざっていてもOKという状況にしました。
Q:プロンプトでは“スチームパンク”という言葉を使ったそうですが、AIは“スチームパンク”を理解しているのですね。
山口:そうですね。AIのツールによってはスチームパンク風のエフェクトがちゃんとありますから。
『グランマレビト』© 2025 generAIdoscope: HIROTAKA ADACHI, TAKESHI SONE, HIROKI YAMAGUCHI / REALCOFFEE ENTERTAINMENT
Q:本作の中には実写と見紛うカットも入っていて驚きます。それが全カットに適応されれば、実写映画と区別がつかないクオリティのものになりますね。
山口:最新のAIはどんどんリアルになってクオリティも上がっているので、それを使って作り直せば、かなり実写に近づくと思います。
Q:AIで作った映像なのか、実写映像なのか、その差がなくなるのは、もはや時間の問題ということでしょうか。
山口:この映画を作った3〜4ヶ月の間だけでも、どんどんツールが進化していました。Googleが出した最新のAIツールのVEO3などを使えば、もっとリアルな映像が出来ると思います。
Q:30年前に全編フルCGの映画として『トイ・ストーリー』(95)が登場しましたが、全編生成AIで作られた長編映画はいつ頃できると思われますか。
山口:すでにあるみたいですね。。僕も自分が昔作った『グシャノビンヅメ』(03)というSFスリラーをAIでセルフリメイクすべく準備を始めています。
『グランマレビト』© 2025 generAIdoscope: HIROTAKA ADACHI, TAKESHI SONE, HIROKI YAMAGUCHI / REALCOFFEE ENTERTAINMENT
Q:今年の年末には、ジェームズ・キャメロン監督の新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が公開されます。これは何百億円という製作費を掛けて最新のCG技術で作られた映画ですが、もうそれと同じことが生成AIで出来るようになってきているのですね。
山口:AIの進化のスピードがとにかく早いので、このまま成長していけば可能だと思います。