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『グランマレビト』山口ヒロキ監督 制作スピードを超えるAIの進化の早さ 【Director’s Interview Vol.513】

『グランマレビト』山口ヒロキ監督 制作スピードを超えるAIの進化の早さ 【Director’s Interview Vol.513】

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ついに全編AIで作られた映画が公開された。『generAIdoscope:ジェネレイドスコープ』は3つの短編で構成されたオムニバス映画。そして、それらの短編は全て生成AIで作られている。身の回りでも急速に目にすることの増えたAI動画だが、ついに映画館で上映される日が到来したのだ。予告編を見る限りでは、一見してAIが作った映像だと区別することができるかもしれない。しかし実際に全篇を見てみると、実写と錯覚するようなカットも含まれていることに驚かされる。


オムニバスの一編『グランマレビト』は、SF作品ということもあり、その世界観はAIが作った映像にうまく融合しているようにも思える。本作を手がけた山口ヒロキ監督は、いかにしてAIで映画を作ったのか。話を伺った。



『グランマレビト』あらすじ

遠い未来。アジアの架空の島国を舞台に、「自錬機械」と呼ばれるロボットたちと、その暴走を抑止・制圧する使命を持つ超能力者たちが織り成す物語。主人公である老女レビトの葛藤や信念を軸に、機械と人間が共存する街の運命が描かれていく。果てなき進化を遂げる機械と、人間たちの理想が交錯する中、レビトの選択が導く未来に待ち受けるものとは―。


Index


制作のスピードを超えるAIの進化



Q:AIで映画を作るという企画はどのように始まったのでしょうか。


山口:本作のプロデューサーである寺嶋千景さんがアメリカでAI関連の仕事をしていて、「AIで動画が作れるようになるので、そろそろ動き始めた方がいいですよ」と、彼女から連絡が来たのが2023年頃でした。ただ、その頃に見せてもらった動画は、ウィル・スミスがスパゲッティを食べているバグったようなものだったので、それで何かが出来るとは思えませんでした。それが2023年の後半くらいになってくると、急激にAIが進化し始めて、以前見た動画とは比べ物にならないクオリティになってきた。「これはそのうち映画が作れるようになる!」と思い、そこからAIの勉強を始めました。


その後寺嶋さんと一緒にAIで作った6分ほどの短編が色んな映画祭で入選したんです。そこからはAIで動画を作る仕事も来るようになり、「今AIで長編映画を作れば日本初、世界初になるのではないか」という話になった。ただ、当時はワンカット2秒しか生成できず、その2秒もスローモーションのみ。だったら、長編は厳しいかもしれないけれど短編を合わせたオムニバスだといけるのではないか。それで曽根剛監督と安達寛高監督にお声がけし、この映画が動き始めたのが2024年の4月くらいでした。


実際にAIで作業し始めたのは2024年の冬からで、それまで僕はずっと脚本を作っていました。他の2人の監督は去年の段階で7〜8割完成していたのですが、うちのチームだけがまだ脚本を書いていて、実際のAIでの作業は年末から今年の2月までの約3ヶ月ほどでした。その時点ではまだ公開は決まっておらず、そこから上映してくれる劇場を探していきました。



『グランマレビト』© 2025 generAIdoscope: HIROTAKA ADACHI, TAKESHI SONE, HIROKI YAMAGUCHI / REALCOFFEE ENTERTAINMENT


Q:最終的に完成したのは今週(取材時8/18週)と聞きました。


山口:いろんなAIを使っていたのですが、それらが2ヶ月おきくらいに進化を遂げるんです。だから今上映するにあたっては、なるべくアップデートしたもので直さないと、以前作ったものでは古すぎてしまう。


Q:AIでの映画制作にあたり何から始めましたか。


山口:当初はまだ情報もあまりなかったので、試行錯誤しながらとにかく色々と作っていきました。スローモーションから脱することが出来なかったり、動かすとすぐに顔が崩れちゃったり。AIは一貫性を保つのが苦手なので、どうしても別人の顔になっちゃうんです(笑)。それでも成立するような内容で脚本を作る必要がありました。


Q:完成した映画は、人の顔など統一されているように見えます。


山口:ある程度は統一していますが、この映画に出てくるおばあちゃんの顔は4人分ぐらいに見えませんか? どうしても4種類ぐらいになっちゃうんです(笑)。今年の8月の段階で使えるAIであれば、もっと一貫性を保てるのですが、さすがにそれを全部やり直す時間はありませんでした。


Q:風景なども崩れやすいのでしょうか。


山口:風景も崩れやすいので、今回は舞台を高層ビル群にしてどっちを向いても“ごまかし”が利くようにしています。森も同じで、どっちを向いても同じような木が生えていればいいので、ごまかしが利くんです。





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