AIと実写のハイブリッド
Q:AIでこの映画を作ってみた手応えを教えてください。
山口:大変でした(笑)。自分1人でやっていたら3ヶ月では全然追いつかないので、僕が画像を作り、それを5〜6人のアシスタントに分担して動画生成をやってもらうという体制をとっていました。ちょうど漫画家のような感じでしたね。そうなると人件費がかかるし、AIツールのアカウント利用料もその分かかってくる。ツールによってはサブスクを払った上に、1回生成する毎にお金がかかるものあって、失敗してもお金は発生する。AIはトライアンドエラーの繰り返しなので、結構お金もかかりました。とはいえ、今回の映画と同じものを3DCGでやろうと思ったら、時間も予算も桁違いにかかってくる。そう考えるとやっぱりAIはスゴいですね。そこの可能性はとても感じました。特に、SFなどをやりたい人には最高のツールだと思います。
また、使いこなす方法としては、実写とAIのハイブリッドが一番良さそうだなと。役者が1人もいないのは僕としては楽しくなかったので、アニメのように役者さんに演じてもらって、その声だけでも使った方が良い。もちろん、実写合成素材として活用するのも良いと思います。AIで作った映像かどうかはそのうち判別しにくくなっていくと思うので、AIを使った動画を知らずと見ていることになるのでしょうね。今Chat GPTを使っている人は、それを使ったことをわざわざ言っていませんから。それと似た感覚だと思います。
『グランマレビト』© 2025 generAIdoscope: HIROTAKA ADACHI, TAKESHI SONE, HIROKI YAMAGUCHI / REALCOFFEE ENTERTAINMENT
Q:影響を受けた好きな映画や監督を教えてください。
山口:『AKIRA』(88)とジャン=ピエール・ジュネの『ロスト・チルドレン』(95)です。今回の映画なんて、もうまんま影響されていますね(笑)。
Q:その世界観を自分で作れるようになったのはすごいですよね。
山口:そうですね。今までは自分だけで作るのは無理でしたから。でも僕は今、実写を撮りたくてしょうがないんです。今年はまだ1本も撮影をしていないので(笑)。
原作/監督:山口ヒロキ
1978年8月22日生まれ。京都府出身。立命館大学文学部卒。立命館大学映画部39代部長。19歳で監督した2作目「深夜臓器」で第2回インディーズムービー・フェスティバル グランプリを受賞。2004年に、自身初の長編映画『グシャノビンヅメ』(洋題『Hellavator』)がモントリオール・ファンタジア国際映画祭でグランドブレーカーアワード銀賞を受賞。代表作は『メサイア』シリーズ、『血まみれスケバンチェーンソー』シリーズ、『トリノコシティ』など。2024年、AI映画『IMPROVEMENT CYCLE -好転周期-』がプチョン国際ファンタスティック映画祭の「Bucheon Choice: AI Films」に正式招待され、その他の海外のAI映画祭でも多数入選・受賞。全編生成AIによるオムニバス長編映画『generAIdoscope:ジェネレイドスコープ』の中の1作『グランマレビト』が2025年8月29日より劇場公開。ガウマピクス株式会社 代表取締役
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『グランマレビト』
8月29日(金)より『generAIdoscope:ジェネレイドスコープ』の一編として公開中
配給:REALCOFFEE ENTERTAINMENT
© 2025 generAIdoscope: HIROTAKA ADACHI, TAKESHI SONE, HIROKI YAMAGUCHI / REALCOFFEE ENTERTAINMENT
『グランマレビト』特設サイト
https://gaumapix.jp/grandmalevit
『ジェネレイドスコープ』公式サイト