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『さよならはスローボールで』カーソン・ランド監督 人生は変化し続けるからこそ“さよなら”がある【Director’s Interview Vol.521】

Ⓒ 2024 Eephus Film LLC. All Rights Reserved.

『さよならはスローボールで』カーソン・ランド監督 人生は変化し続けるからこそ“さよなら”がある【Director’s Interview Vol.521】

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野球と映画、黄昏のとき



Q:途中で出てくるビル・“スペースマン”・リー演じる伝説のイーファス・ピッチャーは、まるで『フィールド・オブ・ドリームス』のシューレスジョーのようでした。


ランド:野球の歴史に詳しい方と話をすると、ビル・“スペースマン”・リーの名前は必ずと言っていいほど出てきます。皆が知っているスーパースターではありませんが、すごく個性的な楽しい人で、イーファスピッチで有名な選手でした。私は彼について詳しくはなかったのですが、私の父が注目していた選手だったということと、ケン・バーンズが監督した「Baseball」(94 TV)というテレビ・ドキュメンタリーのシリーズにカメオ出演もしていたこともあって、その存在を知ってはいました。


この映画のタイトルは『イーファス(原題)』ですから、まずはその“イーファス”を投げられる人を探さなければならない。そんなときに浮かんだのがビルの名前でした。知り合いの伝手をたどって探しましたが、なかなか接点がなかった。どうしようかと悩んでいたところ、彼が住んでいる農家の電話番号をたまたま見つけることができて、そこに電話したら普通に本人が出てくれました(笑)。



『さよならはスローボールで』Ⓒ 2024 Eephus Film LLC. All Rights Reserved.


ビルはこの作品に多くのものをもたらしてくれました。イーファスと関係が深いことはもちろん、この作品に野球史を織り込んでくれる存在でもありました。人生は一瞬にして過ぎ去っていく魔法のような瞬間。ビルが演じるキャラクターは、その一瞬の魔法を起こしてパッと消えていく。僕がこの作品で描きたかった、“時間の経過”を体現するキャラクターになってくれました。


Q:映画鑑賞と草野球観戦のどちらにも、人生を見つめるような共通点を感じます。その思いをこの映画でさらに強くしました。


ランド:そこは全く同感です。独自の時間とリズムを持っているという点で、映画と野球は共通点がある。ピッチャーは時間の流れをコントロールする立場なので、映画監督になぞらえることができます。


アメリカと日本において、20世紀の文化として野球は大きな存在でしたが、現在のアメリカでは野球人口が減ってきていて、少し“たそがれて”きている感覚もある。映画についても同じことが言えるかもしれません。




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監督/脚本/編集:カーソン・ランド

ニューハンプシャー州ナシュア出身。現在はロサンゼルス在住。2021年にフィルムメーカー誌の「映画界の新人25人」の1人に選出された。ロサンゼルスを拠点とする独立系映画製作集団オムネス・フィルムズの創設メンバーでもある。これまでに2019年にロカルノ映画祭でプレミア上映された『ハム・オン・ライ』や、『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』(24)の撮影・プロデュースを務め本作で長編映画監督デビュー。本作と『Christmas Eve in Miller's Point(原題)』は二作とも2024年のカンヌ国際映画祭の監督週間に選出された。映画ライターとして「Slant Magazine」や「ハーバード・フィルム・アーカイブ」で執筆しているほか、「Mines Falls」としてロサンゼルスを拠点に音楽活動を行うなど活動は多岐にわたる。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『さよならはスローボールで』

10月17日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

配給:トランスフォーマー

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